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 夜空に浮かぶ星は一つだけじゃない。才能の数だけあって、瞬きの瞬間も、光の強さも、色合いも何もかも違う。  それなのに、彼は、私のせいで今、その輝きを傷つけられようとしている。  事実を知るまでに、途方もない時間をかけてしまった。彼の戸籍にも傷をつけて、私は今までどうしてのうのうと呼吸を続けてこられたのか分からない。彼が優しいから、その優しさに浸かって、このままここでひっそりと生き続けてもいいような気がしていたのだ。 「そんなはず、ない、のに」  あの日彼は献花台に訪れていた。つまり彼は、亡くした弟を弔う心を持っていたのだ。インターネットに書き込まれるような悪意ある人ではない。それなのに、あの日あの場所で、私が道路に飛び込んでいこうとしていたから――。 「ひかり?」  声が聞こえる。真っ暗闇の中で、少し不安げな声が聞こえてくる。その声は確かに私の名前を呼んで、バタバタと音を立てながら私のそばに近づいた。 「ひかり」  彼が私を見つけた時、私は震える身体を抱きしめて、うめき声を上げながら泣いていた。  結局私は泣くことしかできず、今日、病院で吉報を聞くことができた喜びを伝えることも、疲れて帰ってきた彼を労うこともできなかった。  リビングのフローリングでごみのように蹲る私を見て、大和はすぐに荷物を放り出し、私の身体を起こした。 「ひかり、どうした?」 「う、……っ、う」 「テレビ、つけたのか? うるさいだろ」 「て、れび」 「消していい?」  だめだ。消したらダメだ。もう二度と目をそらしてはいけなかった。
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