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 必死で首を横に振ると、大和はますます眉を下げて私の背中を撫でた。 「どうした? テレビ見たかった?」 「う、うう……っ、」  こんな現実なら見たくなかったよ、なんて、言ってはいけない。言葉にならず、嗚咽を飲みこみながら何度も首を横に振って、大和のティシャツの袖を掴んだ。  私の小さな動き一つで、大和は私の意図を汲み取ろうと私の瞳を見つめる。優しく首を傾げて、私の言葉を待っていた。  人の心の機微に敏感な彼が、心ないナイフのような鋭い言葉に、どうして耐えられるだろう。私のせいで彼の温かい胸に無数のナイフが突き立てられているのだと思うと、消えてなくなってしまいたい。  テレビはすでに深夜のニュースに切り替わっていた。携帯の画面はとうにブラックアウトしていて、私は一日の半分の時間を、この冷たいフローリングの上で過ごしていたのだと気づいた。ぐしゃぐしゃになった髪を撫でられて、ついに震える唇を開く。 「やま、とさん、あの、私……、たいへんなことを、……、ごめん、なさ、」  何から伝えればいいかわからなくて、言葉が途切れてしまった。それなのに彼は、目を見張って、すぐに私の身体を抱き寄せる。  彼の胸にすっぽりと体が収まると、胸が苦しくてたまらなくなる。私は消えてしまいたい。この優しい人を傷つける自分が恐ろしい。それなのに大和は、私の体を宝物みたいに大切に抱きしめて、彼の熱を分け与えてくれる。  
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