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 離れなければならない理由ばかりがあるのに、この胸に抱かれるとどうしようもなく居心地がよくて、何も考えたくなくなる。  この気持ちの名前が何なのか――形にするのがひどく恐ろしい。 「っ、やまと、さん」  形になろうとする心を砕くように、しがみついて名前を呼んだ。星大和という名前は、彼にとてもよく合っている。美しい名前だ。  きっと出会い方が違えば、私は顔を合わせたその時に名前を称賛していただろう。  私に二度名前を呼ばれた彼は、大きく息を吐いて私の耳元でつぶやいた。 「びっくりした……」  心底驚いたのだろう。珍しく彼はしばらく黙り込んで、私の背中を撫で続けている。  やがて彼は私の呼吸が少し落ち着くと腕の拘束を緩めて、真正面から私と向き合った。互いにフローリングに座り込んで、見つめあっている。美しい瞳に、ぐちゃぐちゃになったごみのような自分が映っている。  ひどく哀れな姿の私を見ても、彼は少しも軽蔑したり、眉を顰めたりすることなく笑みを浮かべ、頬に張り付いた私の涙を優しく拭いながら言った。
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