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 優しい人。行くべき道を優しく照らす星のような人。手の届かないところまで駆け上がって、遠ざかっていくだろう人。私のせいで傷つく必要なんて、どこにもない輝ける人。 「俺の側にいてよ。別に悠翔でも大和でもいい。ひかりがそうだと思いたい方でいい」  それなのにどうしてか彼は私の手を掴んで、まるい笑みを浮かべた。テレビに映っていたものとは違う、無防備で気の抜けた笑み。  まるで、私を心から信頼しているみたいに。私に好意を持っているみたいに私を見つめて、私の乱れた髪を耳にかけた。  心臓がじわじわと熱を持って、血の気を失っていたはずの指先が熱くなる。彼がもたらす熱が全身を巡って、うまく息ができない。  この感情が何なのか、考えたくない。もう一度手を握られて泣きたくなる意味を、私は知りたくない。 「手ぇ、あったかくなってきた? 体冷やすなよ。大事にして」  何よりも大切に扱ってくれる。行動で、言葉で、全てで示してくれている。絶望の底に光る優しい熱に、すがってしまいたくてたまらなくなる。
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