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「俺に手ぇ繋がれて喜んでんの?」 「違うし」 「どうだか?」  彼は快活に笑いながら私を玄関まで導いて、片手で帽子被ったあと、同じように私に帽子を被せた。 「私はいらないよ?」 「いるだろ、見つかったら危険だし」 「どう危険なの」 「さあ? ひかりは知らなくていい」  じゃれるように会話しながら、彼はお気に入りのスニーカーを履いて、ぱっと私の手を離してから、すぐに靴箱から私の靴を取り出した。 「これでいい?」 「あ、うん、ありがとう」 「どういたしまして。なんなら履かせてやろうか?」 「ノーセンキュー」  かがみこんで、私のスニーカーに触れている。しなくていいと言ったのに、本当にやってしまいそうだから呆れてしまった。 「なにかのドラマのシーンにでもあるの?」 「バレた? 練習させてよ」 「べつにいいけど……」  戯れに、こういうことをしようとする。大和の目はまっすぐに私を見つめて、いつもわかりやすい表情を浮かべているのに、本気で言っているのか、演じているのか分からないことが多い。  仕方なく恥を捨てて足を差し出すと、大和はうやうやしく跪いて、節くれ立った指先で私の足に触れた。大きな手が丁寧に靴を履かせる。  いつも下から見上げている顔が私の視線よりも低い位置にある。そのせいで彼の美しい睫毛が光を反射して七色に煌めいているのがよく見えた。
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