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「どう?」  感想を求めるように見上げられ、うるさい心臓を無視する。 「これ、本当にスニーカーでやるの?」 「いや、とんがった靴」 「じゃあ練習になってないと思うんだけど……」  呆れたふりをしているうちに、大和はなんとか蝶々結びをして、靴を履かせ終えた。 「いや、台本でも履かせんの、うまくいかない設定」 「ますます練習の意味が、」 「うまくいかなくて、笑われるんだわ。で、おかしくなって笑いあって、キスするみたいな、そういうやつ」 「なるほど、恋愛ものだ」 「そ。それの練習、してもいい?」  いつの間にか、二人の間にあった距離はほとんどなくなっていた。大和の下手な蝶々結びを笑っているうちに、彼は自然に距離を詰めて、私の頬を撫でている。  頭がぐらぐらして、正気を失ってしまいそうだ。 「なに、この流れ? そのドラマ、本当? それとも冗談?」 「どっちでもいいだろ」  軽く流そうとして、退路を断つようにフローリングについていた手を上から握られた。 「ひかり、こっちきて」 「こっちきて、って」  誰よりも近くにいるのに、おかしい。くらくらして止まらなくて、恐る恐る避けていた視線を戻す。
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