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 まともとは思えないアドバイスに笑って振り返ってしまった。私の顔を見て大和が口元を緩める。ウインカーをあげて駐車場に車が入り、滑らかに停止する。  深夜三時近くこの場所は、どうやらほとんど人がいないようだった。特に外に出るわけでもなく、私と大和は目の前に広がる闇のような海を見つめていた。  彼の手が、腿の上に置いていた私の手を握る。まるで、上手く話し出せない私の背中を優しく押してくれているみたいだ。  視線を向けると、少し前までのふざけていた大和はいなくなっていて、真剣に私を見つめていた。何か言いたいことがある時、大和はいつも真っ直ぐに私を見つめる。  その瞳が苦手だ。彼がその目で私を見つめる時、私は常に悩みを抱えている。その全てを暴かれてしまいそうで、いっそ、すべてを打ち明けてしまいたい気持ちになる。それがひどく恐ろしい。  大和は知っている。私がこうして悩むと、上手く眠ることができず、朝日が昇るまでベッドの中で羊を数え続けることを知っている。  だからこうして、詰まったスケジュールの中でも私を連れ出そうとしてくれた。  その優しさの全てが、私の胸を震えさせる。素直に縋り付きたくなってしまう。 「大事な相談をしてくれたんだよね」 「うん」  優しい相槌で、泣き出してしまいそうだ。大きな手で手の甲を撫でられたら、ついに本音が溢れてしまった。
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