830人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
人の気持ちはわからない。移ろい行くものだから、引き止めたり、熱を戻そうとしたりしても、無謀なことだ。それもよくわかっている。
いつまでも覚えていてくれるわけでもない。世間のほとんどが星悠翔を忘れていったように、毎年数多くのタレントが名前を消していくように、人の心はいつも忘却していく。
忘れていくことこそが人生だ。
「私だけはずっと、ずっと忘れないし、ずっと味方でいるし、ずっとファン第一号でいるからねって、そう言いたかった」
そういう人生の中で、私はずっと、覚えていたい。顔も知らない誰かに傷つけられたら、その分だけ私が大切にする。いつもそばにいる。何よりも素敵なのだと何度でも伝える。
だから、見知らぬ誰かの悪意に心を折ったり、輝きを曇らせたりしないでほしい。
あなたは誰かの代わりなんかじゃない。ただ一人の大切な人で、私はいつもあなたの輝きに魅せられている。
それを伝えたくて、水野愛子の話をしているはずが、大和に向けて話しているような気分になって、慌てて顔をそらした。
ドアガラスを見つめても、大和と視線が合ってしまいそうでドアロックを解除した。
「外の空気、吸ってくる!」
最初のコメントを投稿しよう!