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「ひかり、ちいさ」
「大和、本当にすくすく育ちすぎ、目立つ」
「誰も見てねえって」
機嫌が良さそうな顔をして、ちゃっかり私の手を引いてくる。離れて欲しいと言いながら、それに抗議できない私も大概だ。
「手、なにこれ」
「うん?」
「うん? じゃないよ」
苦し紛れに呟くと、大和はとぼけて首を傾げた。せっかく腕まくりをしたのに、大きすぎる袖はすぐに下がってきて、私と大和の手に触れる。
「お、いい感じに隠れたじゃん」
「これで?」
「嫁と手ぇつないでるとこ見られても何も悪かねえし」
そう思っているのは、大和だけだ。
「ひかり?」
「暑い」
「パーカー貸してるから、俺は寒い」
それを言われると言葉が出なくて呆れてしまった。寒そうには見えないし、ふざけて言っているのは知っている。ここでパーカーを返すと言っても聞かないからずるい人だ。
「手だけじゃ温かくならないでしょ」
「うん、じゃあハグしていい?」
「ちょっ、」
していい? と言いながら、彼は私の後ろに回って私を抱きしめた。すっぽりと体が収まって、大和の唇が耳元に寄せられる。
「わり、もうしてた」
「反省してない」
「はは、バレた」
寒いなんて嘘だ。私を抱きしめる彼の胸は熱いくらいで、頭がくらくらする。私の心など少しも知らない彼は楽しそうに私の髪で遊んでからもう一度私の手を握った。
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