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「ひかり」
「うん?」
「話、戻るけど」
大切なことは、いつも彼が教えてくれる。心の位置も生きる希望も、美しい解釈も。
「言わなくても伝わってると思うよ」
「……うん?」
「昌の気持ち。たぶん、言葉にしなくてもわかるよ」
「そう、かな」
「ひかりは目が、嘘つかないから」
まっすぐな言葉が胸に響く。闇に浮かぶ光を見つめながら、何度も彼の言葉を反芻していた。
「そ、う?」
彼女は結局諦めると言って、私は何も言えずにその場を去った。何も事情を知らないのに、大和は笑いながら言う。
「うん、そう。そういうひかりの優しさに触れて、たぶん、恋愛にうつつ抜かしてる場合じゃねえだろって、自分で思ったんだろ」
「まって、恋愛相談とは言ってない」
「そうだっけ? さっきの話聞いててそれとしか思えなかったし」
「推理力がすごい」
「惚れていいけど」
あっさりと雰囲気を変えてしまう。大和の冗談に笑えて、「何言ってんの」とじゃれるようにつっこんだ。
「でもひかりが言いたいなら、ちゃんと言ってやったらいい。すげえ嬉しいだろうから」
「そう、かな」
「そうだよ。わかってても、言葉にしてもらえりゃ嬉しいんだよ」
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