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そっと離れた瞬間に目を開けたのに、さらに腰を寄せられて、もう一度唇に熱が触れる。思わず目を見張っても、大和は笑っているようだった。
「っ、やまと」
「うん、」
こんな危険な場所で、おかしなところを見られてはいけない。慌てて口を手で塞ぐと、大和は少しだけ眉を顰めて、口を塞ぐ手首を掴んだ。
「もういい、でしょ」
「よくない、濃いやつって言っただろ」
「なん、で突然」
「俺がひかりとキスすんの、好きだからに決まってんだろ。だからしたい」
猛烈に熱い言葉を吹き込まれて、全身から力が抜けてしまいそうだ。悟られぬように目を逸らしながら冗談を口にする。
「セリフ?」
「だったらこんなダサくねえだろ」
私の冗談に、大和はすぐに言葉を返してきて、ゆっくりと手を離した。
「まあ勘弁してやるわ」
「上から目線だ」
「俺の可愛い嫁が泣いたら困るし」
私は大和の優しさに触れるたび、胸が苦しくて泣きそうになる。大和は私の心の内側を知らない。
知らずに、私を安心させるように笑って私の頭を撫でた。
「じゃ、帰るか」
「うん、帰ろう」
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