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観葉植物に水をやってからベランダへ出て、ゆっくりと深呼吸する。手すりに寄りかかって空を見上げると、精神を病んでいた時、このベランダから飛び降りようとしたことを思い出した。
「あはは、ひど。そりゃ心配になるわあ」
あの時の大和の表情が、今も瞼の裏に焼き付いて離れない。
彼は私の体を抱きしめて、震える指先で私の瞼の下を流れる雫を掬った。
『な、にして、んの。なに、してんだよ』
彼の声は震えていて、深い悲しみに満ちていた。
自分が何をしようとしていたのか、何が彼を悲しませているのか、よくわからない。何もわからないまま涙が流れて、問われるとおり、答えを返した。
きっと彼には、意味の分からない答えだっただろう。
『ほしが、綺麗だったから』
つぶやいたら、大和は冷えきった私の手を握りしめて、ただ私の言葉を待っていた。
『星の光、掴んでみたくて』
だから身を投げ出そうとした。
都会の空にも見える一際輝く美しい明星を掴んでみたくて、精一杯手を伸ばした。だが、どうやっても届かなくて、途方に暮れてしまった。
『掴めないんだね、どうやっても』
ただそれだけのことにも絶望して心を折る人を見たら、誰でも扱いに慎重にならざるを得ないだろう。
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