猫嫌いの朱雀の娘は白虎の次期当主に執愛される

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「あなたがこの結婚を嫌がっていると聞きまして。式の夜は大変だったとか。それほどお嫌でいらっしゃるのに家のために身を捧げるなど、そんな痛ましいことはございません」  彼女は悲し気に目を伏せた。  珠夏の胸にまた痛みが走った。  麒麟は慈悲の生き物だという。  彼女はその血を引いていて、だからこんなに優しいのだろうか。耀斗もそこに惹かれたのだろうか。 「逃げるのなら、お手伝いいたします。さあ、お早く」 「でも……」 「今を逃すと、次はいつ助けに来られるかわかりません」  珠夏が見つめると、黎羅は黙ってうなずいた。 「……お願いします」  珠夏が言うと、黎羅は優しく微笑した。  珠夏は黎羅に渡された女中服に着替えた。  洋服は久しぶりだった。足元がスース―して心もとなくて、珠夏はなんどもスカートを引っ張った。  黎羅が扉を開け、珠夏がそれに続いた。  黎羅に隠されるようにして移動して外に出た。  タクシーが待機していて、黎羅は珠夏をそれに乗せた。 「まずはご実家にお逃げなさいませ。ご家族に事情を話せば匿っていただけるでしょう」  珠夏はうなずく。もとより、それ以外に逃げ場などない。 「どうぞ、ご自由になってくださいませ」  黎羅は別れ際、そう言った。  タクシーの扉がばたんと閉じられ、車は発進した。
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