猫嫌いの朱雀の娘は白虎の次期当主に執愛される

16/59
前へ
/59ページ
次へ
 自由に。  珠夏はその言葉が胸にひっかかった。  大学までは親に守られ、就職することもなく嫁いだ。学生時代にバイトもしたことはないし、家事もしたことはない。だから自分には生活力がまったくない。  そんな自分が自由に生きることなんてできるのだろうか。  窓の外を見ると、青い空を背に、鳥が翼を広げていた。  実家に帰ると、連絡のない帰宅に姉が驚いた。  珠夏は洋間のリビングに通された。  家を出てから一カ月ほどしかたっていないのに、なんだか懐かしくて涙が出そうだった。 「どうしたの急に。そのかっこうは?」 ソファに並んで座り、紅羽がきく。問いには答えず、珠夏は逆にきいた。 「お父さんとお母さんは?」 「海外旅行中。あなたが嫁に行って肩の荷が下りたとか言って。聞いてなかった?」 「うん……」  暗い顔をしている珠夏に、紅羽は顔をしかめる。 「なにがあったの?」  珠夏はとっさに答えられない。  だが、いつかは言わなければならない。遅くとも夜には珠夏が脱走したことがバレる。 「私、離婚する」 「どうして?」  紅羽の声に不機嫌が混じる。
/59ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加