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自由に。
珠夏はその言葉が胸にひっかかった。
大学までは親に守られ、就職することもなく嫁いだ。学生時代にバイトもしたことはないし、家事もしたことはない。だから自分には生活力がまったくない。
そんな自分が自由に生きることなんてできるのだろうか。
窓の外を見ると、青い空を背に、鳥が翼を広げていた。
実家に帰ると、連絡のない帰宅に姉が驚いた。
珠夏は洋間のリビングに通された。
家を出てから一カ月ほどしかたっていないのに、なんだか懐かしくて涙が出そうだった。
「どうしたの急に。そのかっこうは?」
ソファに並んで座り、紅羽がきく。問いには答えず、珠夏は逆にきいた。
「お父さんとお母さんは?」
「海外旅行中。あなたが嫁に行って肩の荷が下りたとか言って。聞いてなかった?」
「うん……」
暗い顔をしている珠夏に、紅羽は顔をしかめる。
「なにがあったの?」
珠夏はとっさに答えられない。
だが、いつかは言わなければならない。遅くとも夜には珠夏が脱走したことがバレる。
「私、離婚する」
「どうして?」
紅羽の声に不機嫌が混じる。
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