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明治以降から先代までにおいては冷戦状態だった。あからさまな対立はなくなったようだが、敵対していたことに変わりはない。
両家の当代が和解し、その証としての縁談が持ち上がった。
「政略結婚とはいえ断ることもできた。それをあなたは承諾した。今になって反故にしたいとは」
彼が迫って来て、珠夏は思わずあとじさる。
が、すぐに壁に塞がれた。逃げ場はない。自分を守るように胸の前で震える手を組んだ。
「恋愛結婚した夫婦でも離婚することはあります」
負けじと言い返すが、その声は弱い。
「そういう問題ではない」
「それに、本当に結婚したい人がいるんですよね?」
珠夏が言うと、彼の目が不快そうに細まった。
「式をあげて、一生をともにすると神々に宣した相手はあなただ」
確かに、神前式でそういう宣誓をした。だが。
珠夏は泣きそうな目で彼を見た。
彼を美しいとは思う。だが、同時にわいてくる恐怖は抑えようもない。
「離婚は許さない。あなたには反省してもらう必要があるな」
耀斗の虹色の瞳がきらりと光る。
珠夏の体がふわりと浮いた。
気が付いたときには米俵のように彼に抱えあげられていた。
「なにするんですか!」
「暴れると落ちるよ」
笑うように彼は言う。
珠夏は固まって動けなくなった。
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