猫嫌いの朱雀の娘は白虎の次期当主に執愛される

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 そのまま彼に運ばれて、彼女の私室として与えられていたのとは別の部屋に連れて行かれる。  美しく整えられた部屋だった。  家具は飾り気がないが、濃茶の色が洒落ていた。抹茶色の長椅子(ソファ)は革製で、象牙色の絨毯によく合っていた。  奥には畳の敷かれた小上がりがある。床の間には見事な掛け軸がかけられていた。障子のような衝立の下部には牡丹の透かし彫りが美しい。  違和感があってよく見ると、その部屋には窓がなかった。  彼は長椅子にそっと彼女を下ろし、見つめる。  珠夏はそれだけで恐怖に強張り、動けなくなった。 「白虎と朱雀は長く対立してきた。和解したとはいえまだぎくしゃくしている。それを解消するためにも、婚姻は継続しなければならない」  説得というより命令のように響いた。  だけど、と反論しようとするが、珠夏はなにをどう言ったらいいのかわからない。 「しばらく忙しい。展示会が終わったらゆっくり話をしよう」  そう言って彼は部屋を出た。直後、がちゃっと錠の下りる音がした。  珠夏は慌てて扉に駆け付け、ノブをひねる。  が、扉は開くことがなかった。 「閉じ込められた……」  珠夏は愕然と茶色の扉を見つめた。  珠夏はため息をついて長椅子に座り直した。  しばらくすると、女中が脚車のついた木製の配膳台でお茶と茶菓子を持って来た。
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