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湯を浴びて服を整えると、珠夏は耀斗に寝台に寝かされた。
「ゆっくり休んで」
「大丈夫です」
「休んでくれないなら、また閉じ込めるよ?」
いたずらっぽく言われて、珠夏はおとなしく布団をかぶった。
「しばらく、あとかたづけで忙しくなる。だけど今度は逃げずに待っていてくれるね?」
「はい」
「良い子だ」
耀斗は珠夏のおでこに口づける。
珠夏は真っ赤になった。
ふっと笑って、耀斗は珠夏の部屋を出た。
珠夏は布団を頭までかぶった。耀斗にキスされたおでこが熱くて、両手を当てて目を閉じた。
一週間後、耀斗は珠夏をドライブに連れ出した。
連れて行かれたのは、初デートに行った芝桜のきれいな公園だった。
彼はまたその公園を貸し切りにしてくれて、珠夏とともに歩く。
「見頃には少々早かったな」
まだ緑の多い斜面を見て、彼はつぶやく。地表を這うようにして伸びたそれらは、まだらに花を咲かせていた。
「でも、あちらはきれいに咲いています」
珠夏が言うと、耀斗は優しく微笑した。
早咲きの品種が咲きこぼれる場所にはベンチがあり、耀斗は珠夏をそこに座らせた。
珠夏が彼を見上げると、彼は立ったまままっすぐに珠夏を見つめた。
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