猫嫌いの朱雀の娘は白虎の次期当主に執愛される

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 会ってみて、それでも嫌なら断ればいいのですよ。  母はそう言った。  姉の紅羽(くれは)はすでに婚約していて、直系の独身女性は珠夏しかいなかった。  まだ早い、と紅羽は珠夏に味方して反対してくれた。姉はいつも珠夏を守ろうとしてくれてありがたかった。  結局、珠夏は振袖を着てお見合いの席に出向いた。  初めて見たとき、珠夏は目を疑った。  美しい、と思った。その形容詞を男性に使う日が来るとは思っても見なかった。  白金の髪も煌めく瞳も、珠夏の心を一瞬でとらえた。  彼は若草色の色紋付きを着ていた。袴は薄墨色だ。  若草色が彼の雰囲気をやわらげ、なのに全体のシルエットは直線的で凛々しく、年齢以上の貫録があるように見えた。  緊張してしまって、ろくに話もできなかった。  この縁談は流れるだろう。安堵とともに落胆がよぎった。  後日、親を通してお出掛けの誘いがあったときには心底驚いた。 行くよね、という親の圧力もあり、仕方なく珠夏は出掛けた。だけど、心のどこかに期待もあった。  当日、彼は車を運転して迎えに来た。  車を自分で運転する、それだけで耀斗が大人に感じられた。  再び会った彼は現代的でカジュアルな服装だった。前回とは違う溌剌(はつらつ)さもまた珠夏の胸を高鳴らせた。  耀斗は彼女を芝桜で有名な公園に連れて行った。  到着して驚いた。自分たち以外の客が一人もいなかったから。
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