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スズメであっても変化は珍しいので、周りからは褒められた。子供ながらに調子にのっていた。
ある日、スズメに変身して飛んでいた。疲れて地面に降りたとき、猫に襲われた。
必死に逃げて助かったが、それ以来、変身できなくなった。
食べられそうになった恐怖が拭えなくて、外出も激減した。
珠夏はそこまで言って口を閉ざした。
自分の失態の話に、恥ずかしくて消えたくなった。
顔を赤くしてうつむいていると、耀斗が珠夏を抱きしめた。
驚く彼女にかまわず、彼は珠夏の頭をなでる。
「怖かったね」
言われて、じわりと涙が浮かんだ。
こんな間抜けな話、笑われても仕方がないと思っていた。
なのに、彼は受け入れて慰めてくれている。
「俺の一族は白虎……猫みたいなものだ。だが、変化ができるのは俺くらいだし、あなたの前では変化をしない。あなたが嫁入りをしても、怖い思いをすることはないと思う」
彼はいったん体を離した。
「俺と結婚してほしい」
まっすぐに見つめられ、珠夏はかーっと赤くなった。
「はい」
珠夏は思わず承諾した。
彼は優しく微笑し、また彼女を抱きしめた。
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