やればできるじゃん!

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やればできるじゃん!

OKINAWAへ引っ越しをする前の、勝手な私のイメージが、 〝外国のような、、、見たことのない物が沢山ある島“ そして、引っ越す前から、なぜか、構えている自分がいた。 それは、中学入学を控えていたことだけではない、自分でも、よく分からない感覚だった。 小学生から、中学生と、視線の位置も変わり、世界も変わる。 思っていることの半分も、表現できない子にとっては、手探りで日々が過ぎていくことは、なかなかの恐怖だった。 とにかく自分の足元は、しっかりしておかなければと考えた‥‥ 足元?とは、、、中学生なんだから、まずは、勉強さえ、きちんとしていれば、、、そんなわけでもなかった。 英語と水泳が、中学入学後の成績を左右するかもしれないと、勝手な思い込みをしていたが、 英語は、父の仕事柄、通知表を見る際に、真っ先に見る教科だと思った。 娘としては英語の成績くらいは、大変良くできました!と言って欲しい気持ちを、先回りして考えていた。 自分のためでなく、ガッカリさせたくない一心だった。 もう一つの水泳は、自分の思い過ごしも含めて、クラスメイトは、全員、人魚だと思っていたこと。(正しくは、人魚のようだ) 『負けられない、、、』と、競うことが苦手な自分が、本当に、珍しく、なんとも過剰なまでに意識していたのが、 今、考えても、不思議な気持ちになる。 中学入学したばかりだというのに、もうすでに、沖縄で高校受験するか、関東へ戻って、受験するか、 どちらになっても問題ないようにしておかなければならない、私だけ、決まり事があった。 今でこそ、受験モードなんぞ、当たり前な風潮はあれど、あの当時、気が重い、楽しくない、、、OKINAWAを満喫できる気分にはならなかった。 限られた期間のOKINAWA在住だが、私にとっては、親の仕事の犠牲になっているとしか思えない毎日だった。 入学して、ほっとしたことがあった‥‥‥ ‥‥校舎の、裏手にプールはあると思っていた。が、、、『プールがない?‥‥』 母に特訓してもらい、25メートル泳げるようにはなった。すると、小学6年生の時に、水泳大会で選手に選ばれた。 当時の小学校の隣に、中学校もあり、プールを借りて練習したことがあった。 小学校のプールとは違い25メートルではなく、50メートル、、、 しかも、プールの底に足がつかない場所もあり、大人のプールのような、、、 競技用プールで泳げたことが、誇らしかった記憶が甦った。 中学校には、プールがないことで、安心したのも束の間、夏休み明けにプールが完成する噂が広まった。 『なんですと⁉︎』 内心、ホッとしていたのに、これは先生に確認しに行かねば、、、 先生方の答えは‥‥‥ ‥‥‥その場にいた他の生徒は、大喜びだった。 『やはり、彼らは、水が怖くないんだ、、、さすがだ、、、どんな泳ぎをするんだろう、、、』 皆んな人魚のように、自由自在に泳いでいる、、、そんなイメージで、なんだか、怖くなった。 顔色が変わっていたのか、担任に、どうかしたのか?と聞かれたが、心ここに在らずだった、、、 夏休みになって、プール工事に遅れが出ていることを知ったが、念には念を、、、 父の職場にあるプールに通って、出来る限り練習したが、泳げた50メートルからは、なかなか、伸びずに悩んでいた、、、 「プールが完成したからって、いきなり、水泳のテストで50メートルを泳ぎなさいとは、言われないんじゃない?」 躍起になっていたのか、そんな私を見て、母がそう言った。 「それもそうか、、、』 なんだか気が抜けて、その晩、風邪をひいてしまったのか、高熱が出た。 夏風邪は、気をつけないと長引くと言われ、プールどころではなくなった。 熱のせいで、いつも、体中の筋肉や関節が痛くなる。 プールで、泳ぎすぎた筋肉痛なのか、風邪の症状なのか、分からなかった。 これまでの、夏とは、全く違った空気感と、小学生の妹や、弟が、羨ましく思う夏休みだった。 夏休みも終わり、暫く経って、プールが完成し、完成早々にもかかわらず、やはり、水泳大会があると分かった。 だが、その大会の前に、体育の授業で、鉄棒と、縄跳びのテストが待っていた。 テストの後は、1年生全生徒で、縄跳び大会が決定していた。 何でもかんでも、大会って、、、そして、なぜ、縄跳び大会? 私は、一瞬、笑いをこらえて、顔を、思いっきり、つねった。 しかも、縄跳びは、二重跳び大会、、、はてなマークが、頭から溢れそうになった。 その話を聞いた生徒達は、小さなパニックにも似たような空気が流れていた、、、 不思議なことだが、小学校6年生の時に、同じように、縄跳び大会があったのだ。 校庭に180名ほどの生徒が、縄跳びを、スタートの笛と共に、跳び始めて、足が引っ掛かった時点で、校庭の隅に座って待機するという、 これも、なんだか分からない大会だったが、なんと、校庭に最後に2人残ったうちの、1人が、私だった。 体育の授業で、鉄棒が大の苦手で、逆上がりも、懸垂も出来なかった。それプラス、跳び箱も、3段が精一杯。 その中で、縄跳びもあって、それくらいは、、、と、帰宅すると、毎日、練習をしていた。 帰宅してから、クラスの子達と校庭に集まって練習もした。そんな練習をしていた時に、 からかい半分で、近寄ってきた男子生徒の1人が、二重跳びをして見せたのだ、、、 なんだろう、今のは?みんなして、きょとんとしたまま、何が起こったのかと、確かめていた。 「もう一度、跳んで見せて」  瞬きもしないで、みんな真剣に見つめていた。 「〇〇君って、やっぱりカッコいいね〜」 女子生徒は、口を揃えて、そう言っていたが、私は、なぜか、二重跳びを跳んでみたくなって、その場で、練習した。 簡単ではなかった、、、 しかし、あの時の練習の成果もあり、中学1年の縄跳びテストは合格、、、鉄棒はギリギリ、、、セーフだった。 縄跳び大会、、、二重跳び、、、笑いそうになったが、やるなら真剣に、、、 スタートして、10分位は跳んでいた、、、二重跳びで。 大会前に、時間を計って、二重跳びの練習をしている姿を、父が見かけたらしく、後から母に聞いたのだが、 人間離れして見えたそうで、その話も、思い出しながら、ひたすら、二重跳びを続けた。 なんだか、無我夢中で、跳んでいた‥‥‥目を閉じて、跳ぶことに集中していた‥‥‥ ‥‥‥そして、ピーっと、体育の先生のホイッスルの音が聞こえた‥‥‥ 目を開けて、跳ぶのを止めた。 なんと、今回は、1番になれた。生まれて初めて、自分を自分で誇らしく思ったら、涙が出てきた‥‥ 感動したり、嬉しい時に、笑顔になる人が、羨ましく思うことがあるのだが、自分は、涙が出てしまうから、、、 泣かないで、満面の笑みで、嬉しさを噛み締めたい自分がいる‥‥ さて、次は、水泳大会だな、、、
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