その2 吹奏楽部

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その2 吹奏楽部

部活動見学は、まだ続いていたが、友人のサトミさんは、そろそろ、決めていた。 吹奏楽部の見学の際、殆どの人が、なんらかの楽器の演奏が出来ていた、、、 先輩は勿論、入部を決めていた、1年生も、、、 しかし、サトミさんは、3歳からピアノを習っていたが、小学5年生で辞めてしまったらしい、、、 何故、辞めたかは、聞かなかったが、音楽から離れることは、出来なかったのだと思った。 他の部活の時よりも、真剣だったからだ、、、 それプラス、部活顧問の先生が、サトミさんのタイプだったらしく、、、 その先生が、話をする時は、ずっと、目がハートになっていた、、、ように見えた、、、。 その顧問は、音楽の教師で、中3の担任だった。 個人的主観だが、私には、矢沢永吉さん似の先生だと思った。 楽器は、ピアノは勿論のこと、ギター、トランペット、ドラム、クラリネット、、、 あらゆる楽器の演奏が出来て、いつも、黒のTシャツに、ブラックジーンズスタイルの先生、、、 教師には見えない、個性的な教師だった。 「決まりかな?」 そう、サトミさんに聞いた、、、 部活動見学は終了になるかと思いきや、サトミさんから意外な言葉が返ってきた、、、 「音符も読めるし、音楽の成績も悪くない、、、けど、私、クラリネットを演奏したい‼︎」 初クラリネット、、、見学していて感じたが、クラリネットは、本当に難しい、、、 『チャレンジャーだなぁ〜、、、サトミさん、、、』 そう思うと同時に、イヤ〜な予感がした、、、 「サトミさんなら、出来ると思うし、、、頑張ってね‼︎」 サトミさんの顔を見ると、あのスマイルバッジのような満面の笑みで、、、 しかも、目をパチクリさせて、何かを企んでいるようにも見えた、、、 「言っとくけど、もう、体験入部はないから‼︎」 そう言うと、私の後ろで、あの矢沢先生が、大声で、 「体験入部、大いに結構‼︎ 大歓迎しますっ‼︎」 目の前の、サトミさんは、言うまでもなく、まるで、漫画のように、ジャンプして、 飛び跳ねて喜んでいる、そのまた後方で、部員の方々までも、楽器で拍手し始めた、、、 演劇部で、付き合って発声練習や、イントネーションの練習を横で見守ってくれたのだから、、、 そう思って、決めた。 「サトミさんが、吹奏楽部に入部するなら、マウスピースの音が出るようになるまで、 体験入部に付き合います‼︎」 そう伝えると、サトミさんも、部員の方々も、矢沢先生も満面の笑みで、拍手していた、、、。 それから、暫く、保護者の様な、つもりでいたが、、、 私まで、クラリネット奏者になりそうな毎日になっていった、、、 想定外だった、、、マウスピースの音は出るのだろうか?、、、 あれから、1ヶ月、、、 サトミさんは、すっかり、クラリネット初心者になり、運指を覚え始めていた、、、 私は、3回に1度ほどは、音が出るくらいで、見守り役に徹していた、、、 そろそろ、帰宅部に戻れるかな、、、 その年の秋に、吹奏楽部の県大会があり、我が校も出場が決まり、 晴れて、サトミさんもクラリネット奏者となった。 ずっと、昔から、クラリネット奏者でいたかのように思うほど、違和感は無かった。 舞台を見つめながら、始めた頃からの日々が、走馬灯のように頭をぐるぐるしていた、、、 演奏が始まると、感慨深いものがあり、涙が溢れた、、、 まるで、親が子供の演奏会を見にきた様な、、、そんな感覚だった。
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