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「い、急いでなんか」
「やっぱりこの前、素敵な人に会ったの?」
「あれからため息ばっかりだもんね」
からかわれて、顔が赤くなった。
「図星ね」
「誰かしら」
「うまくいくといいわね」
王宮まで、リエーヌは話のタネにされてしまった。
はりきって王宮に来たものの、ユリックに会うことはできなかった。
また召使はたくさんの洗濯物をリエーヌに持たせた。
今度は落とさない様にしながら、ユリックを探してキョロキョロした。
だが、ときおり遠くにおっさんの貴族を見かけるものの、彼の姿を見ることはなかった。
そんなうまくいかないか、とリエーヌはまたため息をついた。
仕事を終えて集合場所の裏庭に戻ろうとしたときだった。
まだ日は残っていて、あたりははっきりと見えていた。
木陰に、女性がいるのを見た。
王太子妃だ、とすぐに分かった。
艶やかな黒髪に明るい若葉のような色の瞳。すっきりした繊細な美少女で、胸が大きく、ウエストは細い。ピンクの生地にたくさんのレースとフリルがつけられたドレスを着ていた。
彼女は暗い顔をして、袖に隠れた二の腕をさすっていた。
リエーヌは嫌な予感がしてその姿を見ていた。
王宮に上がる前、同じように暗い顔をして腕をさすっている女性を見たことがあった。
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