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リエーヌはすぐさま扉から身を離した。
知らず、体が震える。
ユリックは難しい顔をしてリエーヌの肩を抱き、彼女を誘導した。2人でそっとその場を離れる。
落ち合った場所に戻ったリエーヌは、ようやく大きく息を吐いた。
「怖かった?」
たずねられ、頷く。
と同時に、自分の意気地のなさが情けなくなった。
ひどい目にあっている人がすぐ近くにいたのに、助けにいくことができなかった。恐怖で竦んでしまった。
「今日はここまでにしよう。助けに行くにしても準備が必要だからね。よくがんばってくれた。夜道は危ない。送って行こう。本当は迎えにも行きたかったんだ」
「そ、そんな」
いいです、とは言えなかった。少しでも長く彼といたかったから。
「気にしないで。あなたの勇気に感謝する」
ユリックに微笑みかけられ、恐怖心は消し飛んだ。
帰り道はあっという間だった。
またね、と言ってユリックは歩き去る。
その晩、リエーヌはろくに眠れなかった。
あれから数日が経過した。
何も進展はなかった。王宮の手伝いには呼ばれないし、ユリックとも会っていない。
「ねえねえ聞いた? 王太子妃様の話」
洗濯の最中に同僚に言われて、リエーヌはどきっとした。
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