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「知らない。なんのこと?」
「リエーヌったら本当に王宮のことにうといわよね」
えへへ、と笑ってごまかす。内心は冷や汗が流れていた。
「王太子妃様、お倒れになったんだって」
「ええ!?」
思わず大きな声が出た。
「そこ、無駄なおしゃべりしないで」
アデリーンにじろりと見られ、慌てて手を動かす。
「もう。怒られちゃったじゃない」
小声で文句を言われる。
「ごめん。それで、お倒れになったって、どうして?」
「毎晩、王太子様が眠らせてくれないんだって!」
うふふ、と同僚が笑う。リエーヌは青ざめた。
「毎晩、それはそれはもう、激しいんですって」
お許しください、というか細い声。殴られるような音。
リエーヌは男女のことに疎い。そういう行為が実際にどんなふうに行われるのかも知らない。だが、あの様子はとうてい、夜の営みによるものとは思えなかった。
「私は妊娠して倒れたって聞いたわよ」
別の同僚が口をはさむ。
「最近、ろくに食事もとってないって」
「あら、つわりかしら。でも、結婚してから……計算合わなくない?」
「もう、そんな野暮なこと言うわけ? もちろん前から愛し合ってたに決まってるじゃない」
「でもご懐妊なら公表するんじゃない?」
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