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「時期ってもんがあるのよ」
わかったように言う同僚に、リエーヌは何も言えなかった。
その夜、リエーヌは眠れずにいた。
彼女がいるのは大部屋で、周りはもう全員が眠りについていた。
昼間に聞いた同僚の話は、以前なら一緒になって盛り上がれたはずだった。
だが今は、いろんなことを考えてしまう。
こつん、と窓になにかが当たる音がした。
気になって窓を開けると、木の陰に馬と共に立つ人影が見えた。
月明かりに照らされたその人を見て、リエーヌは慌てて外に出た。
「ユリック様、どうしてこんなところに」
「君に会いたくなって」
ユリックは羽織っていた外套を脱ぎ、リエーヌに着せた。
リエーヌは顔を赤くした。慌てて出て来たので夜着のままだった。
「こちらは進展がなくて。君に会う理由を探せなかった。だけど、がまんできなくて会いに来てしまった」
言われて、リエーヌは泣きたくなった。
「どうしたの?」
「不安で。怖くて」
そう言うと、ユリックはリエーヌを抱きしめた。
リエーヌは突然のことに驚き、声も出ない。ユリックの腕の中が温かくて、胸がひときわ大きく高鳴った。
「私が一緒に調べようなんて言ったからだ。すまない」
「いいんです」
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