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その紙を見つけたとき、ルネスランは顔をしかめた。
「なんだこれは」
王太子妃ジャスリーナの洗濯物をチェックしていて、それを見つけた。彼はジャスリーナの洗濯物をチェックするのを習慣にしていた。秘密がバレないようにするために。
紙にはミミズがのたくったような落書きが書かれていた。
文字のように見えなくもない。
暗号かとも思ったが、どちらかというとやはり、字のように見えた。
なにかあればいってください。おたすけしたいです。
どうやら、そう書いてあるようだった。ところどころ字がひっくりかえったりいびつになったりしていた。差出人の名前はなかった。
「どうかなさいましたか?」
ルネスランの難しい顔を見たジャスリーナがたずねる。
「なんでもない」
ルネスランは手紙をぐしゃりと握りしめた。
ジャスリーナに接触しようとするとは思わなかったな。
彼の目がギラっと光った。
ユリックがリエーヌを尋ねて来たのは、その夜のことだった。
馬にのってきた彼は、またも窓に小石を当てて合図した。
気付いたリエーヌは慌てて外に出た。
いつかと同じように、ユリックは彼女に外套を着せてくれた。
「王太子妃が危ない。一緒に来てくれないか」
リエーヌは息をのんだ。
「もしかして、私のせいで……」
ユリックは怪訝そうに彼女を見た。
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