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「どうして?」
「私、手紙を書いたんです。王太子妃様にあてて……」
「それか……」
ユリックの呟きに、リエーヌは目をぎゅっとつぶった。
「とにかく、今は早く」
ユリックはリエーヌを抱え上げてひょいと馬に乗せると、自身もひらりと飛び乗った。
「う、馬なんて、初めてで」
「しっかりつかまって」
ユリックはそう言って急いで馬を走らせた。
初めての馬の乗り心地は最悪で、王宮に到着したリエーヌは全身ががくがくと震えていた。
それでも王太子妃を助けなくては、と自分を叱咤して、リエーヌを気遣うユリックとともに王太子の寝室へ向かう。
「すまない、少し焦り過ぎた」
ユリックはリエーヌに謝る。
「大丈夫です。それより、今は王太子妃様を」
2人は衛兵に見つからないように、慎重に歩を進めた。
幸い、誰とも会うことなく王太子の寝室に辿り着いた。
ドアに耳をつけると、悲鳴のようなくぐもった声と叩くような音が聞こえた。
「準備はいいかい」
ユリックに言われ、リエーヌは頷く。
ガチャっと扉を開けたあと、リエーヌはユリックに押されるようにして部屋に飛び込んだ。
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