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「どうかお見逃しください。こんなこととは思いませんでした。絶対に誰にも言いません」
ああ、とリエーヌは思いだす。
余計な詮索はするんじゃないよ、とアデリーンが言っていた。
言うことを聞いておくべきだった。
まだ幼い弟妹、地道に働く両親が頭に浮かぶ。家族を巻き込まないでいられるといいのだけど。
「君を助ける対価は? まさか何もないのに自分だけ助けろなんて言わないよね?」
舌なめずりしながら、ユリックは言う。
「私にできることでしたらなんでもします」
「なんでもするんだね」
「で、できることでしたら」
気圧されて思わずあとずさる。その手を、ユリックはつかんだ。
「これから、うちに来てもらう」
ユリックが言い、リエーヌは怯えた。
「俺だけの女王様になってもらうよ」
何を言われたのか理解できず、リエーヌはまばたきを繰り返した。
「私と王太子殿下はM仲間でね」
えむ、とリエーヌは呟く。
「初めて会ったときから思っていたんだ。君に踏みつけられたいって」
ユリックは興奮で瞳を潤ませ、リエーヌを見つめた。
こうしてリエーヌは洗濯係から女王様にジョブチェンジした。
終
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