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リエーヌは慌てて祈るように膝をついて両手を組み、彼に向き直った。
「申し訳ありません。お許しください」
「謝ることはないよ。君は何も悪いことをしていない。さあ、立って」
手を引っ張られ、彼のもう片方の手で背を支えられるようにして、リエーヌは立った。
「洗濯物かな。落ちてしまった……けど、今拾ったらセーフってことにならないかな?」
彼はいたずらっぽく笑う。
リエーヌはただただ見とれた。
「注意がおろそかになっていたようだけど、何か心配ごとでもあった?」
どきっとした。
王子の汚れたシーツのことが思い出された。
「何してるの!」
叱責の声がとんできた。
召使の女性の声だった。
「こんなに散らかして! ——ユリック様!」
召使の女性は慌てて頭を下げた。
「彼女は悪くないよ。私がぶつかってしまったんだ。この洗濯物、どうしよう?」
「洗いに出しますので、ご安心ください」
リエーヌはがっかりした。せっかく洗ったのに。
「彼女にだけたくさん持たせるのはかわいそうだよ」
召使の腕に抱える洗濯物を見て、彼は言った。
「いえ、今日はたまたま。気を付けます」
「そうしてあげて」
言って、彼はリエーヌに向き直る。
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