新人洗濯係が覗いた秘め事 ~王太子の秘密を暴いた先にあるのは溺愛か死か~

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「そんな有名な人なんだ……」  リエーヌはつぶやく。   同僚は、知らないの、と驚いた。 「来たばっかりですから」 「そっか。見て損はないわよ。素敵なんだから!」 「その人って、ユリック・エル・ローニャックっていいますか?」 「なんだ、知ってるんじゃん」 「知ってるのは名前だけです」  昨日会ったとは言えなかった。  それに、印象が違った。彼女が会ったユリックは優しく微笑していたから。  会いたい。  また会うことになる気がする、と彼は言っていた。  だが、普段は王宮になど用事はない。  もう二度と会うことなんてないだろう。  リエーヌは何度目かわからないため息をついた。  王宮に行く機会は、思いのほか早くやってきた。  また人手がないから手伝いがほしいと言われたのだ。  リエーヌは真っ先に手を上げた。  アデリーンは苦笑して、じゃあお願いね、と言った。  また数人で王宮に向かう。  30分の道のりがやけに長く感じられた。早く早く、と気が急いて仕方がなかった。 「リエーヌったらなんでそんな急いでるの?」  同僚が驚き半分、からかい半分で言う。
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