10人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな有名な人なんだ……」
リエーヌはつぶやく。
同僚は、知らないの、と驚いた。
「来たばっかりですから」
「そっか。見て損はないわよ。素敵なんだから!」
「その人って、ユリック・エル・ローニャックっていいますか?」
「なんだ、知ってるんじゃん」
「知ってるのは名前だけです」
昨日会ったとは言えなかった。
それに、印象が違った。彼女が会ったユリックは優しく微笑していたから。
会いたい。
また会うことになる気がする、と彼は言っていた。
だが、普段は王宮になど用事はない。
もう二度と会うことなんてないだろう。
リエーヌは何度目かわからないため息をついた。
王宮に行く機会は、思いのほか早くやってきた。
また人手がないから手伝いがほしいと言われたのだ。
リエーヌは真っ先に手を上げた。
アデリーンは苦笑して、じゃあお願いね、と言った。
また数人で王宮に向かう。
30分の道のりがやけに長く感じられた。早く早く、と気が急いて仕方がなかった。
「リエーヌったらなんでそんな急いでるの?」
同僚が驚き半分、からかい半分で言う。
最初のコメントを投稿しよう!