その時起こったこと(2)

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その時起こったこと(2)

「まあ……!! どうしましょう、わたくし、何か大変な罪を犯してしまったのですね!? 国外追放。あ、だから王子殿下が……わたくしは一体、何をしてしまったのかしら? ……でも、何も覚えていないのですけれど」  アイリスは本気で困惑して、眉を寄せる。  ぷるぷると体まで震わせて、「う〜んっ……!」と必死で思い出そうとしているのだ。  呆然とアイリスを見つめていたユーグだったが、思わずアイリスの様子を見て、頬が緩みそうになってしまった。 (な、なんだこの可愛さは………っ!!)  ユーグは自分の手が思わず震えるのを感じ、必死で両手を握りしめた。  このシリアスな事態に、なんということだ。  アイリス、自分でこの可愛さがわかっているのか……!?  ユーグだけでなく、侯爵夫妻もついアイリスに見惚れていたようだが、侯爵はさすがに家長。立ち直りが早かった。  こ、こほん、と咳をして、アイリスに言う。 「アイリス。あのバカ王子のことは全て記憶から消し去ってしまって、問題ない」 「え、でも」  アイリスが困惑すると、侯爵夫人も、ずい、っとアイリスに近寄って言った。 「アイリス。お父様のおっしゃる通りですよ。あんなクズのことを覚えているだけ、脳に余計な負担がかかります。もう存在自体、すっぽりと消し去ってしまえば良いのです。本当にバカバカしい。わたくし達一族が、どれほど低姿勢で王家に尽くしてやっていたか。あの人達はただ、わたくし達一族の力がーー」 「ローズマリー」  侯爵に低い声で言われ、侯爵夫人ははっとして黙った。 「お母様……?」  そんな両親を、アイリスは不思議そうに見上げた。 (バカ王子? クズ? ……エドワード王子殿下のこと? お父様も、お母様も、なんだか急に性格が変わられたようですけれど、本当に何かあったのかしら)  ノーフォーク侯爵は、ふう、と大きなため息をついた。  そしてまっすぐにアイリスを見つめて、言った。 「アイリスは自分で、自分に魔法をかけてしまったのだ」  * * * 「魔法……?」  アイリスが呟いた。  しん……と部屋の中が静まり返る。  いつの間にか、セイラや他のメイド達の姿は消えていて、部屋の中には、侯爵夫妻とアイリス、それにユーグしかいない。  ユーグが立ち上がって、「侯爵……私もこの場を外した方が」と言いかけたが、侯爵は首を振った。 「構わない。君も薄々気づいていただろう。同席してくれたまえ。さて、アイリス、これは今まで、お前には一切、知らせていなかった話だ」  侯爵はそう前置きすると、静かに話し始めた。 「ノーフォークの一族には、忘却の魔法の力が伝わっている」
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