腐女子だった

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腐女子だった

 女神の言ったように、この世界の住民は、みんな俺に好意を持ってくれるようだ。  宿屋に着くと、店主というには若く見える、金髪の男が満面の笑みで出迎えてくれた。  宿屋の金髪主人に食堂に案内され、すぐさまごちそうが供される。  俺が食事をしていると、【村長 レベル13】と30人ほどの村人が挨拶にやってきた。  口々に俺の来訪を喜んでいる村人たちは、みんな美形であった。  50代であろう村長ですら、中年特有のお腹のたるみもなく、貴族的な顔立ちをしている。  数時間が経ち、村人たちの挨拶も全員終わった頃、俺はねむくなってきた。無理もない、女神との謁見、初めての異世界、沢山の村人との会話、今日はいろいろあった。  頭は大人としても身体は子どもの俺には、睡眠が必要なのだ。  村人たちの残念そうな顔を後に、俺は宿屋の主人に案内されて部屋に入った。  すると突然、宿屋の主人がいきり立つ下半身をに露わ(あらわ)にし、俺に覆い(おおい)かぶさってきた。  俺は咄嗟(とっさ)に、防御魔法を唱え宿屋の主人から逃げた。   あけ放たれたままのドアから村人たちが、村長を先頭に全員下半身をむき出しにして入ってくる。  みんな、瞳に好色そうな光を携え(たずさ)て……  いくら相手のレベルが低くても大人数、まだこの世界での戦闘を経験したことのない俺は、とうとう村の自警団の青年に押さえつけられ、村長に猿ぐつわを当てられ、魔法発動の呪文を封じられてしまった。  魔法が使えなくなった俺は、ただの少年。  大人たちの暴力に屈するしかない。  女神様、助けてください!!  頭の中で女神の声が響いた。 「ホーホッホッホ。コレよ、コレ!  こんなのが見たかったのよ〜!  大勢の男たちに犯されるノンケのショタ!  いいわ〜 良いわ〜」    クソっ 何でこんなことに……   初体験の相手が男なんてイヤだ!!  そう頭の中で叫んだ俺に、女神の声が響く。 「あら? 私の作った世界には、女なんて不浄な者はいないのよ。  これからも、私に楽しい景色を見せてちょうだい。  契約したわよね」  この腐女子女神!  心まで腐ってやがる。 (了)
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