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「――かわいい」
それは本当に、思わず漏れてしまった呟きでした。
お付きの侍女にギョッとした顔をされたけれど、そんなことが気にならないくらい、私の目は一点に釘付けになっていました。
視線の先にいるのは、実情はともかく見てくれは美しく煌びやかなこの場には似合わない、白と黒の巨体でした。
見るからにふわふわと柔らかそうな体毛はまるでぬいぐるみのよう。縁を黒い模様で覆われた黒曜石のようなつぶらな瞳があまりに愛らしくて心を奪われます。
なんですかこれは。なんなのですか、この生き物は。
呪われし化け物皇帝。
それがこんなかわいいだなんて、誰が想像できたでしょう?
この後宮にいるのは、皇帝の子を孕めば利になるからと無理矢理嫁がされた女性や、身分の低い者が大抵。自ら望んで入る物好きなどいないと聞きます。
だから皇帝の来訪を耳にした時、どんな恐ろしい見た目の殿方がいらっしゃるのか……などと恐れていたのに、想像していたのとあまりに違い過ぎました。
のっそのっそと彼が歩くだけで女官が、宦官が、妃が顔を伏せ、嫌そうに避けていく中。
目を輝かせているのは、どうやら私だけのようでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
私はこの国の後宮妃の一人。
故郷から遥か東、縁もゆかりもない地で妃となったのは自ら望んでのことではなく、罰という名目で厄介払いされてしまった故です。
「ピエレット・ブフィエ。お前と婚姻を結ぶつもりはない。婚約は破棄とし、罰として東国の化け物皇帝へ嫁ぐことを命ずる!!」
侯爵家の娘として生を受け、未来の王妃になるはずだった私の未来は、たった一言で大きく捻じ曲がってしまいました。
私の婚約者であり、先王陛下の急死で王位を継がれた若き新国王陛下。国王となって初めて下した王命は、民のためになる政策ではなく私を事実上追放することだったのですから驚いてしまったものです。
しかも嫁げと言われた相手は化け物皇帝、なんておぞましい二つ名を持つ相手。
完全なる嫌がらせです。
「証拠は……おありなのですか」
「彼女が涙ながらに訴えてきてくれたのだ! 偽りであるはずがなかろう?」
王位を継がれる前の王太子であった頃から、婚約者様……いえ、元婚約者様と呼ぶべき人は私を目の敵にしていらっしゃいました。
可愛げがないことが一番の不満らしく、「王妃になるには可愛げなど不要だと思うのですが」と何度申しましても聞き入れてはくださいません。挙句、可愛げがあるという平民の女性と懇意になり始めました。
その女性は言葉遣いも礼儀も足りないだけではなく、明るい笑顔も作り物なのが丸わかりだったので、ただの玉の輿狙いで間違いなかったでしょう。
しかし元婚約者様はあろうことか、本当に心を通わせていると勘違いなさって彼女の言葉を鵜呑みにしたようで。
私が平民を虐げていると根も葉もない悪評を流し、王になるや否や婚約破棄騒動を起こすという暴挙に出ました。
本来許されざる婚約の反故を決行できたのは、平民が王子様に見初められるという内容の恋愛小説が流行していたおかげも少なからずあるでしょうか。
小説の当て馬に準えられて悪役令嬢と呼ばれていたくらいです。無慈悲な追放を告げられても、それが当然であるかのような空気感を全身でひしひしと感じました。
元婚約者様がまだ王太子であったなら、侯爵家の力でなんとか抵抗することもできたかも知れません。しかし王命です。王命に従わない、それ即ち叛逆と看做されます。そして我が侯爵家は叛逆を起こせるほど強くない。
私が真に悪役令嬢だったなら好き放題に暴れてやっても良かったかも知れませんが、そんな行動は到底できません。結局選択肢は一つだけで、ドレスの裾をギュッと掴んで込み上げる怒りをやり過ごし、粛々と王命に従わざるうを得なかったのです。
そして送られた先、祖国とは建造物から文化から何もかもが異なる東国の後宮。
呪われし化け物皇帝を主とする、女の園でした。
「綺麗……」
芳しく咲き乱れる花々、建物の至るところに施された美術品のような彫りの数々。
見た目だけは、本当に見た目だけは完璧そのものだったのです。
後宮に入ってすぐ、東国の洗礼を受けましたが。
「あら、あれ……」
「おかしな衣を着込んで、化粧も派手。品性の欠片もない」
「濡羽色の髪こそ至高ですのに、けばけばしい金の髪だなんて、せっかく顔がそこそこよろしいのに勿体のうございますね」
「西国からいらした蛮族の姫君ですってよ」
「まあ、どおりで」
東国の妃嬪たちから向けられたのは、紛れもない悪意の視線。
『東国における皇帝の妻は一人に定まらず、百人ほどの妃嬪と共同生活を送る』。婚約破棄以前の妃教育で学んでいたので、後宮の恐ろしさを露ほども理解していなかったわけではありません。
しかしこれしきの陰口、祖国の社交界でもう慣れっこです。だから何も問題ないとたかを括っていました。
後宮入りした当日にとある妃嬪が冷たい池の底に沈められたと知らされるまでは。
「驚いていらっしゃるのですか? ここでは日常茶飯事でございますよ、こんなこと」
私付きとなった侍女の言葉に、ゾッとせずにはいられませんでした。
殺めてまで他者を蹴落とすのは、寵妃の座を得たいからではなく上位の妃であればあるほど待遇がいいから。本来は皇帝からもたらされる寵愛の大きさで順列が決まるのですが、現在は強者を蹴落とせば自然に後宮内での順位は上昇するという仕組みのようです。
さらには三日目は強力な毒で、四日目には階段から突き落とされて死んだと耳にしました。
蛮族の姫などと嗤われている私がそのような目に遭う可能性は低いかも知れませんが……全くないとは言い切れません。
逃げ出したくてもそうはいかない。後宮の出入りは厳しく、妃嬪が出られるのは齢が四十に達した時のみです。後宮は、戦場よりも命の危うい地獄でした。
そこで私は出会ったのです。
白と黒。今まで見た何よりも愛らしい御方に。
――それは後宮入りしてから十日目のこと。
東国の衣装である着物はできるだけ色の地味なものを選び、身を潜めるようにして過ごしていた私は、遠くから……本当に遠くから御姿を見て、初めて心を躍らせました。
たくさんの護衛に囲まれ、そのわずかな隙間から窺える、ずんぐりむっくりとした影。
纏っていらっしゃった真っ赤な衣も冕冠という東国特有の帽子も特徴的でしたが、何より目を引いたのはその巨体。
ぬいぐるみを連想させるもこもこ・もふもふな体毛。犬を何倍にも大きくして丸みを帯びさせたような印象と言いましょうか。
一目で理解できたのは、明らかに人間ではないということでした。
「――かわいい」
そう呟いてしまったのは、本当に仕方ないと思います。
かわい過ぎます。見るだけで癒されるかわいさ。かわいさが天元突破しています。
全身をゆっさゆっさと揺らしながらのゆっくりとした歩み、つぶらな瞳、何かの草を食んでいるらしくもきゅもきゅと動く口元……それら全ての愛くるしいことと言ったら!
祖国では見たこともなければ名を聞いたこともないその生物に駆け寄りたくなりましたが、グッと我慢しました。
この後宮では、下手な行動を起こせば死に繋がるかも知れないのです。迂闊な行動は控えなければ。
それにしても一体何なのでしょう、このかわいさは。
お付きの侍女も含めて、顔を伏せたり嫌な顔をする女官や妃といった反応を示す人々の気が知れません。こんなにもかわいいのに。
見せ物でしょうか? しかしそれならこれほど人間らしい格好をしないはずです。首を傾げていたところで、通りかかった妃嬪に声をかけられました。
「あら貴方、化け物皇帝を眺めていらっしゃいますの?」
「え……」
「蛮族の姫とだけあって、おぞましいケダモノに興味津々なのねぇ」
化け物皇帝、それすなわち後宮の主。
告げられた事実に息を呑まずにはいられません。
それと同時に。
「おぞましいケダモノ……あの御方が? あんなにかわいらしい生き物を化け物呼ばわりなさるのですか?」
と、信じられない気持ちにもなりましたけれど。
確かにお世辞にも美しいなどと言えないのは事実です。体型は横に広いですし、二足歩行しているだけで動物にしか見えませんし。
でも丸顔ですよ。目や鼻や口が全部中央に集まっているんですよ。殿方をかわいいと評するのはあまりよろしくないことかも知れませんが、かわい過ぎるものはかわい過ぎるのです。
けれども妃嬪は「かわいらしい」と口にした私をおかしなものを見る目で眺めてきます。
「どう見ても化け物じゃない。言葉を話す二足歩行の大熊猫だなんて」
「あのかわいい生物は大熊猫と呼ばれているのですね」
「そんなことも知らないんですの? ……呆れた」
つまらなそうにそう言って立ち去っていく妃嬪。
彼女とわかり合うつもりはないので正直なところ別にどうでもいいのですが、情報をくださったことには密かに感謝しました。
私はどうやら、一目惚れしてしまったようでした。
恋愛的な意味とは少し違います。ただ、強く思ってしまったのです。
あの、白と黒の柔らかそうな体毛に触れてみたい……できれば思う存分に撫でくり回したい、と。
数日後。
「また死人が出たらしいな」
「はい。以前皇上がいらしてくださった時より、十の命が失われました」
「……左様か」
深々と頭を垂れる後宮妃に、重々しく低い声が降り注いでいました。
その話題は決して明るいものではないのに、わたしは前のめりになってしまいます。だってその声は、皇帝様のものなのですから。
皇帝様に一目惚れしてしまったあの日から、可能な限り彼のことを調べました。
今は亡き前皇后が呪いを受けたとかで、人ならざる姿でこの世に生まれ落ちた御方。人と獣が混じり合った、御伽話の中に出てくる獣人という存在に近いのでしょう。
大熊猫に似ているのはあくまで容姿だけで、頭の中身はおそらく並の人間よりずっと上。二十歳という若さで即位し、貧しかった国を五年足らずで栄えさせた賢帝でありながら、その成果を正当に認められていないといいます。
きっと、化け物皇帝の異名で見下されているからに違いありません。
かわいい上に有能らしい皇帝様にますます魅力を感じ始めていたところ、私が後宮入りしてから二度目の来訪の知らせが。
今度こそ上手く近づき、さりげなく触りたい!……と思いましたが、そうはいきませんでした。
皇帝様は定期的に後宮に足を運んでは、四夫人と呼ばれる貴妃、淑妃、賢妃、徳妃という、現在不在の皇后を除いて最高位の妃たちだけとお話しして帰ってしまうようなのです。
ぶらぶらと後宮内を見回る皇帝様は最高にかわいらしいですが、毛並みに触れるどころか、残念ながら身分の低い妃嬪は顔合わせの機会すら与えてはいただけません。こちらの姿を見ていただける程度の近さに寄ろうとすると、衛兵に押し返されてしまいます。
せいぜい許されるのはお声を聞くことくらい。
私はここへ罰として嫁がされてきた身。妃嬪の序列の中では最底辺です。
だからと言って諦め、ただひたすら眺めて愛でるしかできないのでしょうか?
――否。断じて否です。
死と悪意の渦巻く後宮内でなんとか生き抜き、その上で四夫人になればいい。
毛並みを撫でたいがためにそこまでしなくても、とは自分でも思いますけれど、地獄のようなこの場所で見つけた目標を捨てるつもりは微塵もありませんでした。
四夫人になるために必要なことは何なのかをまずは考えなくてはなりません。
他の妃嬪のように殺めることによる排除はしたくないので、穏便に、かつ確実に成り上がれる方法が望ましいでしょう。
一晩中思考を巡らせ続けました。これほど頭を働かせたのは生まれて初めてかも知れないというくらい。
そして。
「いいことを思いつきました」
小さく呟いて、笑みをこぼす私。
私は早速行動を起こすことにしました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
後宮での身分は主に四つあります。
上から順に四夫人、九嬪、二十七世婦、そして八十一御妻。私の立場は八十一御妻の末席です。
さすがに罪人への罰だと馬鹿正直に後宮側に言うわけにはいかなかったのか、表向き祖国から皇帝への贈り物という形で嫁いできた私は、最底辺の八十一御妻にしては珍しく侍女がついています。ですがたったそれだけで特別扱いなんてないも同然。
そんな中でいかに成り上がるか。簡単です、この後宮の闇を暴いてやればいいのです。
――たとえ皇帝様のもふもふに触れられるようになったとしても、地獄のままでは息苦しいですしね。
「成り上がろうですって? その前に死んでしまいますよ。弁えられなさいませ」
「やってみないとわからないでしょう。見ていなさい」
侍女には鼻で笑われましたが、最後に笑うのは私です。絶対の絶対に。
死にたくないという気持ちは変わりませんけれど、どうせ何もしないままでは皇帝様に近づくだけで殺されてしまいます。危険の芽はなるべく摘んでおかないといけません。
後宮の端から端まで彷徨き回り、あらゆる立ち話や噂を聞き込んだ結果、誰が誰を憎く思い、殺めているのかについて全体像が掴めてきました。
毎日のように起きている殺しの実行犯は、気に入られて自分の地位を上げたい八十一御妻と二十七世婦、合わせて七十人以上。この後宮にいる人間の半数近くが人を手にかけていると思うととんでもない話です。
もちろん実行犯がいれば企んだ人間もいるわけで、九嬪を調べてみたらなんとほぼ全員が黒。
難しいのは妃嬪たちの罪を公にする術ですが、もちろん手はあります。
定期的にやって来る皇帝様の来訪の日。
『私は彼女らの罪を知っている』という一言と共に、直近にあった事件の首謀者や実行犯、殺害方法までを事細かに書いた告発状を、皇帝様の目に触れさせるためにこっそり後宮の至るところに撒き散らしました。
皇帝様は後宮での死亡者を憂いていらっしゃるようでした。事件だろうと悟りつつも動いていなかったのは後宮に立ち入る機会が少なく、また私と違って盗み聞きできるような立場にもない故に手がかりが得られないからではないかと私は考えたのです。
非常に聡明でいらっしゃる皇帝様のことですから、ここまでわかればあとはどうにでもしてくださるでしょう。
私の期待通り、まもなく犯罪行為をしていた者が一人、また一人と後宮から消えていきます。あまりにも人数が減って、八十一御妻が廃止になるほどです。
彼女らが正しく裁かれれば当然空席ができます。その空席に腰を下ろすのが私というわけでした。
八十一御妻から二十七世婦になって、九嬪に上り詰めるのにかかった月日はたったの一月。
一人しかいなかった侍女も数人にまで増えて贅沢が許される暮らし。きっと皇帝様と出会っていなければ、これで満足できたでしょう。ですが私は止まりません。
残るは四夫人の座のみ。これはさすがにとんとん拍子とはいきませんでしたけれど、幸いなことに後宮において最高齢だからと偉そうな顔をしていた淑妃がいたので、蛮族の姫と罵られたりしながらも他の妃嬪と手を組んで数人がかりで引きずり下ろし――――そして、やっと手に入れました。
愛らしい皇帝様、彼と言葉を交わす権利を。
この時をどれほど待ち望んでいたことか。
遠目から見つめ続けていた御方が、すぐそこにいる。そのことに胸の鼓動が止まらず、歓喜に全身が震えるのを隠せそうにありません。
向かい合うのは二足歩行の大熊猫。大きな腕を組んでいて、その姿勢を含めて今日も今日とてかわいいが過ぎます。
侍女は置いてきたので邪魔者はいないも同然です。
「貴殿が新たな淑妃だな。名をなんと申す?」
「ピエレット・ブフィエと申します。後宮の太陽たる皇帝様にお会いできましたこと、たいへん嬉しく存じます。――ところで」
皇帝様のつぶらな瞳へまっすぐに視線を注ぎ、微笑みを見せました。
「その柔らかそうなお体に触れさせてはいただけませんでしょうか」
触れたい。触れたい。撫でくり回したい。
顔合わせの瞬間に手が伸びそうになったのをグッと我慢した私は本当に偉いです。相手の許可を取らないと、嫌がらせになってしまうかも知れませんからね。
皇帝様を取り囲む護衛の方々がざわりと揺れたのは、きっと私を警戒してのこと。
ですが私は怯まず皇帝様だけを見つめ続けます。
「は……?」
「もう一度言います。撫でさせてくださいお願いします無理ですもう耐えられないです」
「あ、うん、待て。しばし待て。余に触れたいと?」
「はい!!」
こんな大声を出すのははしたないとかいうことは、頭から吹き飛んでしまっていました。
いきなりがっつき過ぎて引かれてしまったでしょうか。でももはや自分自身でも制御が効かないのです。
「ピエレット、だったか。余が何と呼ばれているか知っていないわけではないだろう」
「皇帝様のことを悪様に罵るなんて愚か者の極みでございましょう? だって、皇帝様は私がこの世で知る誰よりもおかわいらしくいらっしゃますもの!」
――。
――――。
――――――――。
ただただ沈黙が流れました。完全に皇帝様は固まってしまっていました。
しかしそれは束の間のことです。すぐに皇帝様は正気を取り戻されたようで。
「本気、なのだな」
確かめるような言葉と同時、自らの手を差し出してきます。
「撫でよ」
一応、他の妃に見られていないか確かめました。……何人かに見られていました。「化け物相手に何をやっているんだ」という軽蔑の目でした。でも構いません。
皇帝様と初めての触れ合いをする覚悟を固め、いざ触れてみると。
「――っ!!」
思っていたのと全然違いました。
ふわふわかと思いきや、やや硬い上、毛に油分が含まれているのかしっとりとした手触り。
期待を裏切られましたが決して悪い意味ではありません。いい意味です。意外ながら、しっとり感が心地良く、いつまでも触れていたくなります。
笑顔が崩れてへにゃへにゃになっていることに気づかないくらいの至福。
いつの間にか皇帝様の腕に抱きついて、貴族令嬢としても、四夫人の一人としても断じて見せるべきではない醜態を晒してしまいましたけれど。
皇帝様との初顔合わせは、間違いなく最高のものでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冷静になってみれば初対面であんなお願いをするのは変な女以外の何者でもない気がしましたが、皇帝様が認めてくださったので問題ない……はず。
一度触れられただけの幸せの極み。なのに、嬉しいことにそれだけで終わりにはならず、度々皇帝様が会いにきてくださるようになりました。
「ご機嫌麗しゅう皇帝様。ピエレットでございます」
「ああ。近況はどうだ」
「小競り合いはよくありますけれど、至って平和です。今日のモフモフ時間を与えてくださいませ」
「……まったく、物好きな娘がいたものだ。西国ではこれが普通なのか?」
太い首を捻りながら頭を掻く皇帝様の姿は、かわいい以外の言葉が思い浮かばないほどのかわいさです。
三回目、四回目にもなると飽きてきそうなものですが全く逆。ますます感触に魅了され、至近距離で見る愛くるしい顔に胸をときめかせずにはいられません。
煌びやかな衣を剥がし、皇帝様のぽってりしたお腹を掌から手の甲まであらゆる部分で撫でまくりながら、私は答えます。
「西国の普通は、私にもわかりかねます。あの国にとって私は普通を装っていただけの異物だったのかも知れません。そして後宮においてもまた異質でしょう。でも安心してください。皇帝様をかわいらしいと思う気持ちだけは本物ですから!」
「熱意がすごいな」
「皇帝様に御自覚がないことが驚きです。あ、首の周りを触らせていただいても?」
「余は化け物だぞ。いつ噛み殺すかわからない」
「私、調べましたよ。大熊猫は草食だって。お体が大きいですから押し潰されたらひとたまりもありませんが、皇帝様は人を食らったり危害を加えたりするような方には見えません。……あ、これ笹です。よろしければぜひお召し上がりください」
最初に見かけた時に皇帝様が食んでいらっしゃった草は、笹というらしいです。
後宮の一角の雑木林に笹の葉が生えていたので摘んでおいたものを皇帝様に渡してみると、警戒の目を向けられてしまいました。
「食べ物で釣るつもりか」
「釣るだなんて……。ただ、首の周りも触らせていただきたいと思っただけございます」
「欲望を隠さないところはいいが首はさすがにむず痒い」
「では代わりに頭はいかがです?」
「――――。いいだろう」
悩んだようでしたが、笹欲しさに負けたのか、首を縦に振ってくださった皇帝様。
護衛や妃嬪の視線を浴びる昼間の後宮にて、まるで子供にやるように、私は皇帝様を『よしよし』することになりました。
私にとっては特大ご褒美。皇帝様も大して人の目を気にしていないらしいため、これも無問題です。
「ピエレット様はすごいわよね。あの皇帝様に気に入られるなんて」
「わたしにはあんな度胸はありませんわぁ」
「しかもあれで喜んでいらっしゃるのだから、変態だわ」
他の妃嬪の囁き声が聞こえてきても無視一択です。
というかなんですか、変態とは失礼な。
でも後宮が平和になったおかげで蛮族の姫と罵られることは無くなりましたし、初めて他の妃嬪……貴妃から皇帝様のかわいさに理解を示してもらえました。
「今まで化け物だと恐れていたのだけど、よく見たらなかなか魅力的な方ね?」
「ですよね!!」
「羨ましいわ、皇上と懇意になれて。わたくしなんてろくに目を合わせていただけたこともありませんのよ」
「皇帝様は親しみやすい御方です。恐れずに向かえば、きっと応えてくださいます」
以来、貴妃とは仲が深まり、度々皇帝様についての話に花を咲かせるまでになりました。
……それはさておき。
皇帝様とは少しずつ少しずつ、強引に距離を詰めていって。
いつの頃からでしょう。最初は戸惑いの大きかった化け物皇帝様は私へかわいらしい笑顔を向けてくださるようになり――その眩しさにやられた私の想いは歯止めがきかなくなりました。
「ああ、皇帝様を私の抱き枕にできればいいのに」
皇帝様の腕に頬擦りしながらうっかり本音を漏らしてしまったのは、私が後宮に来てからちょうど半年のある日。
抱き枕にできれば間違いなく今の何倍も心地よく眠れるでしょう。触れれば触れるほど病みつきになってしまうこの感触をもっと味わっていたいという単なるわがままでした。
だから真剣に受け取られるなんて微塵も思っていなかったのです。
「わかった」
「えっ」
「わかったと言っている。余を抱き枕として使いたいのだろう? 今度後宮に来る際に望みを叶えてやろう」
「ええ、まあ、はい。えっと、お願いしま……す……??」
途中で声が途切れたのは、自分の考えていたのがとんでもないことだったと気づいたから。
抱き枕として使う。その意味を改めて考えてみましょう。
私の寝具にするわけです。ということはつまり寝床を共にするのであり、そのためには私の部屋に皇帝様をお招きするわけで。
絵面を想像するだけでダメでした。無理無理無理、無理過ぎます。
私は年頃の乙女なのですよ? 婚約破棄された傷物ですけれども。そもそも後宮入りした時点で皇帝様と婚姻を結んでいるのですけれども。
しかし言い出したのは私です。皇帝様にはしっかりと頷かれてしまいました。今更「冗談でした」では済みません。
なんと弁明しようかとあたふたしているうち、モフモフ時間が終わり、皇帝様のお帰りの時間がやって来てしまいます。
結局一言も発せぬまま抱き枕の約束は有効になってしまいました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
月の光すら差さない昏い夜更け。
ベッドに腰掛ける私の胸は、不安で満ちていました。
まもなく皇帝様がこの部屋へやって来てしまうのですから当然でした。
はっきり言って皇帝様のことは好ましく思っています。
容姿以外にも、後宮の者たちを気遣ってくれる優しさとか、私のわがままを色々聞いてくださるところとか。
ですが、いいえ、故にこそ。
ただ皇帝様を撫でくり回したいという不純極まりない動機で淑妃になっただけの私では釣り合うわけがありません。
抱き枕なんて方便に過ぎず、詰まるところは寵愛が目当てだと思われたでしょう。それでもいいと頷かれるくらいに私は皇帝様を絆してしまったということなのでしょうか。
蛮族の姫である私を寵愛したとなれば、ますます皇帝様が悪く見られてしまいかねないというのに。
貴妃の方が相応しいのではないのでしょうか。でも、それはあの愛らしい皇帝様が私以外のものになってしまうということ。
それはなんだか――とても、厭でした。
そもそも皇帝様は後宮の主。私たち後宮妃が彼のものであるだけであって、持ち主の権限など私にはないとわかってはいてもそう思わずにはいられません。
醜い独占欲が湧き上がってきてどうしようもないのです。
皇帝様の姿を思い浮かべながら唸り、考え悩んでいた最中のこと。
部屋の戸がとんとんと軽く叩かれました。
皇帝様がいらっしゃったのでしょうか。
身構えてしまった私ですが、耳に届いたのは彼の方のお声ではなく、後宮入りして以来ずっと傍付きでいてくれているあの侍女のものでした。
「失礼します」
「ああ、どうぞ」
ホッとしながらも、私は違和感を覚えます。
なぜこのような時間に侍女が訪ねてくるのでしょう? 夕飯はとっくに終わり、寝支度も済ませたはず……。
「浮かない顔をしていかがなさったのですか」
「皇帝様のことを考えていたのです。あれほど親しくさせていただいて、皇帝様のご迷惑にはならないだろうかと」
あえてぼかして内心を吐露すると、「なるほど」となんとも言えない表情で微笑まれました。
実は今宵の皇帝様の来訪は周囲に知らせていないのです。
もしかすると一部では噂になっているかも知れないですが、侍女が知っていたとしたら相応の準備を整えるでしょうから話が広まっていないに違いありません。
秘すことにしたのはできるだけ大事にしたくないから。朝になって見つかる前に皇帝様には早々にお帰りいただければ幸いなのですが。
「そういうことでしたら、ちょうど新種の、気分の落ち着く効能のある茶葉をお持ちしましたのでお呑みください」
「お茶……ですか。いただきます」
やはりどこか引っかかります。
しかし皇帝様を迎え入れるためにお茶が必要なのは確か。侍女の手で茶を沸かしてもらい、私は陶器の器を受け取りました。
まずは味見。それから味が良ければ、皇帝様にも。
皇帝様の好物である笹と合うようなものなら尚良しなのですが、そこまでの高望みはしません。ただ失礼に当たらなければそれでいいのです。
香りは今まで嗅いだことのない、かなり刺激的なもの。味は……不味いとしか、言いようがありませんでした。
あまりにも驚いて一気に飲み干してしまったくらいの味の悪さ。
訂正。直後に舌を焼き尽くすような痺れが襲ってきて、私は大きくえずいてしまいました。
がしゃん、と器が鋭い音を立て割れ、すぐに侍女がそれを拾い集め始めます。
「何ですか、これ……っ」
「お口に会いませんでしたか? それは残念。やはり烏頭は強烈過ぎていけませんね。お茶に烏頭の出汁を加えて作った特別性でしたのに、もったいない」
「う、ず?」
「別名トリカブトともいいます。化け物のために笹を探していた貴女様なら後宮の片隅に生えていたのは見たことがあるでしょう」
私がこれほど苦しんでいるのに、説明の間ずっと侍女は表情を少しも崩しませんでした。
そして最後ににこりと笑って。
「猛毒でございますよ」
彼女の言葉があまりにも予想外で、呆然としてしまったのは本当に仕方ないことだと思います。
毒。それも猛毒。つまり私は今、毒を盛られた……?
でも、一体何のために。
この侍女が私を殺めて利することなんて何もないでしょう。皇帝様がもうすぐ来てしまうというこの時を狙った理由があるのでしょうか。
口のみならず手足にまで痺れが広がり、私は言葉を話すこともその場から離れるために動くこともできなくなってしまいます。
次は腹痛と胃から逆流しそうになる感覚。淑女たる者、このような醜態を見せてはいけないと耐えようとしても無理でした。
「こ……て、さま」
ひどい有様になりながら皇帝様の名を呼んでしまったのはどうしてだったのか。
息も苦しく、浅くなって。意識を手放しかけた時、再び戸が開かれ、その向こうに立つ人物の姿に目を見開いてしまいました。
なぜなら――皇帝様の話で盛り上がり、親しくなった貴妃だったのですから。
さらに背筋がゾッとするような美しい笑みのおまけ付きです。
「貴妃様、殺りました」
「ご苦労様。あとは池にでも沈めて、うまく隠蔽なさい。そうすれば九嬪くらいにはしてあげるわ」
「ありがとうございます」
貴妃と侍女の間で交わされる、意味のわからないやり取り。
でも、それでもわかってしまったのは、私に毒を仕掛けたのが貴妃に他ならないということでした。
「ど、し……て」
「あら、ピエレット様。本当にご自覚がないのね。手触りがいいだとかなんだとか、子供のようにはしゃいでいるうちは良かったわ。でも皇上と夜のお付き合いをしようっていうなら話は別。蛮族の国を追われた訳ありの小娘などに皇后の座を奪われるわけにはいかないもの」
だから私の侍女を用いて暗殺しようと企んだ、と。
異国の者だからか、侍女に忠誠を捧げられていなかったのは知っていました。でもまさかこんなことになるなんて。
「欲をかいたのがいけなかったのよ」
――そう、ですね。
欲をかいた自覚、多分にあります。だからきっとこれはその報い。恨むなら後宮の闇は消し去ったと勝手に思っていた自分の愚かしさでしょう。
それに、ここで私が死んだ方が皇帝様にとってはいいのかも知れないですし。
頬に伝う涙は、毒物を呑んだ苦しみからくるものなのか、皇帝様を抱き枕にするという約束が果たせなかったことへの罪悪感なのか、もっと別の感情が理由なのかはわかりませんでした。
わかりたく、ありませんでした。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
冷たい。冷たくて寒くて暗く、濁った水の匂いと音がします。
これが死の世界というやつなのでしょうか。ずぶずぶと深みへと沈んでいく私は、遠くから誰かの声を聞きました。
ピエレット、と私を呼ぶ声は、低くて心地良く、身を委ねたくなるようなあたたかなもの。
縋りたい。でも縋ってはいけない。死んでしまったからか、深淵へと呑まれゆく中でも恐怖はありませんでしたから、助けを求めるようなことはしません。
婚約者からの愛を得られず追放され、皇帝様の姿に一目惚れした挙句、殺されるような女です。このままどこまでも沈んでいけばいいと思いました。
なのに――――どうして私の手は、痺れて感覚を失った手は、がっしりと掴まれてしまったのでしょう。
力強い掌でした。
人間とは違う、六本の指は私を掴んで離してくれませんでした。
「今引き上げる!」
もしかすると死の世界ではなく、死の前の夢を見ているのかも知れません。
都合よく助かるわけがありません。毒を呑まされて死んだのです。死んだ、はずなのです。
ゆっくり、ゆっくりと引き上げられていく私の体。
冷たい水が消え去った途端、ごわごわでもふもふな何かに包まれました。何か……その正体はわかり切っています。
これは、皇帝様の。
「生きているな」
「……ぁ」
「余を抱き枕にせよ。すぐに医者にかからせる」
意識がぐらぐらしますが、構いません。
閉じた目を無理矢理押し広げて私は見てしまいました。
黒い首元、たるんとした顎。そして私へ向けられる、優しい眼差しを。
その破壊力はあまりにすご過ぎて、気絶してしまいました。
次に目を覚ましたのは、小鳥の囀りの聞こえる朗らかな朝のこと。
皇帝様のもふもふでごわごわな体毛に包まれ、眠りこけていたようです。悪夢は見ませんでした。抱き枕があまりにも心地良過ぎたおかげでしょう。
毒のせいで喉が焼け、ろくに声が出ませんでしたが。
間近にあった皇帝様の顔のかわいさの暴力を受けて掠れた悲鳴を上げたのは当然といいますか、誰だってそうなると思います。
「――目が覚めたか」
「こーて、さま……!」
「ピエレットがこうなったのは余の責でもあるからな。目覚めるのを待っていた。五日も眠っていたのだ、あまり喋らない方がいい」
「たしか、わた、し、死んで」
「毒に侵されたが生きている。運が良かった」
生きて、いる?
信じられない気持ちで飛び起き、思い出しました。
侍女に毒を盛られたこと。そこそこ良好な関係だと思っていた貴妃に裏切られたこと。冷たい水の中で沈んでいたら、皇帝様が引き上げてくださったこと。
「毒で意識を奪われた上、池に落とされたていたのだ。大熊猫は泳ぎが得意なので余自ら助けた」
あと少し遅れていたらどうなっていたことか、と皇帝様は重々しい声でおっしゃいます。
大熊猫が水を泳げるなんて初耳です。大きな体躯で泳ぐところをこの目に焼き付けたかった。それはそれはかわいかっただろうと想像して少し悔しくなりました。
「貴妃と侍女には厳罰を下した。ピエレットを侵した毒と同じ烏頭を食む刑だ。彼女らは運に見放されていたのであろう、すでにこの世にはいない。故にもう心配せずともいい」
「ありがと、ござ……ます」
どうやって犯人を特定したのでしょう。皇帝様では私がやったようにこそこそと立ち聞きはできませんから、犯人特定から証拠を掴むまで、並々ならぬ苦労があったに違いありません。
皇帝様はそれをあえて口にしようとはせず、私を安心させるための言葉だけを紡いでくださいましたが。
死ぬつもりでした。その方がいいと思ったからです。己の心を押し殺してでも皇帝様のためになるなら正しいのだと信じようとしたからです。
でも……皇帝様のつぶらな瞳に射抜かれてしまっては、死ねば良かったのに、なんてとても思えませんでした。
皇帝様が本当に心の底から安堵してくださっていることがわかってしまったから。
「ど、して、たすけてくれた……のです、か?」
私は皇帝様に愛していただくに相応しくないのに、どうしてそのような眼差しを、向けてくださるのですか?
「余を化け物ではなく見て、好いてくれた。その恩を返したかった」
「おん、がえし?」
「後宮内での争いで母は他の妃嬪に呪われ、生まれて落ちて以来この姿だ。遠ざけられ、向けられるのはうすっぺらい忠誠ばかり。余をかわいいと宣い、好いてくれたのはピエレットが初めてだった」
人を動物のような姿で生まれさせてくる呪いにかけられてしまったという皇帝様は一体今までどれほど苦しんできたのか。
そんなことを考えもせず、初めて見た時からかわいいかわいいと言っていた私は可笑しく見えたでしょう。
けれども静かに語る皇帝様の声にはわずかに熱がこもっていました。
「――それに」
抱き枕の……皇帝様の顔がもぞもぞと私に迫って。
メェメェという甘く耳心地の良い鳴き声と共に、耳元で囁かれました。
「もっと、ピエレットとこうして触れ合いたかったのだ」
大熊猫が甘く鳴くのは求愛の時だけ。
大熊猫の正体を調べて知っていたからこそ、歓喜に震えてしまいます。
私も。
「わた、し、も……です」
感極まって目から涙がぽろぽろとこぼれ落ちてしまい、皇帝様はそれを手の甲でそっと拭ってくださいました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
後宮は皇帝様の手によって廃止になりました。
「ピエレット以外を愛すつもりはない」と堂々と宣言なさったからです。
これには国中の貴族――特に娘を政略の駒としか捉えていないような人々に大反発を受けたようですが、さすがは賢帝。それらの批判を全て説き伏せ、嫌々後宮に送り込まれていた身分の高い妃嬪は解放され、身分の低い妃嬪や女官たちは皇帝様の下で雑用として仕えることを許されました。
「後宮なんてくだらぬ争いの元、早々に消しておけば良かった」
「ですが後宮がなければ皇帝様と出会うこともありませんでした。殺されかけたのもいい思い出です」
「ピエレットは本当に肝が据わっているな。それでこそ皇后たり得る」
それはどうでしょうか。
今でも、私なんかが皇后になっていいのか、と思ってしまいますが――そのあたりは詳しく考えないようにしています。
祖国のものではありますが妃教育を受けていますから、皇后の責務をこなせないことはないはずですし。
そうそう、これは完全に余談なのですが。
私が後宮にて奮闘している間、遥か西、私の祖国は大変なことになっていたようです。
元婚約者様が平民の女性を王妃にしてしまったおかげで貴族界が荒れに荒れ、すぐに内乱が起きて、国が崩壊。
私の生家であるブフィエ侯爵家が王権を握って新たな王政を築いたようでした。
「悪役令嬢のようだと罵られることもなくなった。望むなら後宮から戻ってきてもいい」と父から手紙を寄越されましたが私はもちろん丁重にお断りしました。だって、皇帝様と離れるのなんて嫌ですもの。
皇后になったらなおさら異国の血が混じっているからと奇異の目で見られることはあるでしょう。
しかし私の隣には、同じくこの国にとって異物で、そして誰よりもかわいい賢帝がいてくださるのですから、恐れはしません。
――ああ、たとえ呪われた故の御姿であっても本当にかわいい。皇帝様を愛でて癒しをいただけさえすればどんな無理難題でも乗り越えられそうです。
皇帝様と愛を交わし、初めて触れることを許された首をそっと撫でながら、そう思うのでした。
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