第5章 告白

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第5章 告白

 結衣ちゃんとはラインだけは交換してあった。  六月始めの土曜日、ラインしてみた。 「久しぶりに会えないかな。明日、また三時に公園で。見せたいものがあるんだ」と。  結衣ちゃんからラインが返ってくる。 「先輩。わたし、嫌われたかな、て。会えますけれど」  臆病そうなうさぎのスタンプも送られてきた。  廉はくまが「お休み」を言うスタンプを送った。  その日、廉ははじめは素顔のままで、公園に行くことにした。  公園に着くと、結衣ちゃんはもう来ている。スズメに豆のお菓子の餌をあげていた。  結衣ちゃんの髪はだいぶ伸びていた。肩にギリギリ届くくらいまである。 「見せたいものっていうのはこれ」  廉はスミレ色の伊達メガネを、結衣ちゃんの前に、メガネケースに入った状態でまず見せる。 「かけてみるけど、笑わないでほしい。絶対に!」  結衣ちゃんは、廉の言葉の何かがツボにハマってしまったのだろう。すでに笑いをこらえている。  仕方がないので、できる限りさりげなく、そのスミレ色のメガネをかけた。 「あ、すご」  結衣ちゃんが笑うのをやめて、そう口にした。廉の目を見てる。  メガネ越しだけれど、初めて、この子と本当の意味で、目が合ったような気がする。   廉は頭を下げて言う。 「俺と、お付き合いしてほしいんだ。桜澤結衣ちゃん。いや、結衣って呼んでいいかな。なんか、妹みたいに思ってて。ずっと大事にするから。一緒に、いろんなところに出かけたいから」 「と言うと、わたしを『好き』って気持ちなんですか? それ」  廉が顔を上げると、結衣ちゃんは真っ直ぐに廉の目を見て問いかける。 「好き、とか恋、とかはこわい感情ですよ。わたしは不安で眠れなかったりしますもん」  結衣ちゃんは小さな声で言う。 「寝れない時はさ、夜中の二時だって三時だって、俺にラインしてくれていいよ」  廉は結衣ちゃんに近づくと、頭をポンポンとした。今は、そんなことが自然にできる。不思議なことに。 「忍田先輩。やめてください。あーもう。スミレ色、っていうのは先輩にすっごくよく似合うんです。反則級に似合うんです! 何でも言うこと聞きますよ!」  結衣ちゃん、いや、結衣はちょっと怒ったように言う。  軽くぶとうとしてるのか、こちらに出されたこぶし。その手を廉はそのまま受け止めて、お互いの手と手をつないだ。  少しだけ、公園のあたりを散歩する。  それだけの時間だったけれど。  女の子とつながれた手の温かさは忘れがたかった。  今度、また雨上がりに虹が出た時も、ふたりでこの公園で虹を見たい。そう、廉は思っていた。  
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