生徒会長と、「スミレ色」の不思議な絵

第1章 ルミちゃん②

　そのかわりに、小学校五年生あたりからハマったのは雑貨集めだ。女子が友達と交換するようなレターセットを買った。マスキングテープも。使うあてなんてなかったのに。
　勉強机の中にある、密かなコレクション。姉の紗夜（さや）も知らない。
　高校生になってからも、夜の勉強の合間に、「可愛い雑貨」の紹介動画をスマホで見てた。
　奏とは男同士でよくショッピングモールに行くのだが、廉は必ず、ちょっと大きめの可愛い雑貨を丹念に観察していた。
「結局、買わねえのか」と奏は毎回苦笑していた。
　家の勉強机の引き出しの中に収納できるあてのないものは、買えない。
　長年の痛みがよみがえる。本当に好きでたまらなかったのに。
「先輩。ルミちゃんを返してくれたのに申し訳ないのですが、もう新しい子をおばあちゃんが買ってくれたんです」
「結衣ちゃん」は自分のカバンを指差す。青いテディベアがくっついてる。
「あげますよ。ルミちゃん。そのかわりだけど、大切にしてくださいね。わたし、桜澤結衣です。絵描きになりたい、変な子ですよ」
　結衣ちゃんはまぶしく笑った。さくら色のリップを塗った唇が、朝日を浴びてツヤツヤしてた。
　バスが来たので、ふたりは乗り込む。
　バスが混んでいたので、お互い、会話はできなかった。でも、廉は「なにか始まりそうな予感」を感じていた。