第2章 ゴールデンウィーク①

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第2章 ゴールデンウィーク①

 雨上がりの五月四日は虹が少し出ていた。  廉は「ちょっと出かけるよ」と家族に声をかけて、必要最低限のものだけ持ってふらりと家を出た。近所の公園なら、虹がよく見えるような気がした。  公園には先客がいた。ノラの猫をなでてるのは、あの結衣ちゃんに間違いない。  廉は虹を見てるふりをしながら、公園に入って、濡れた草を踏んでいた。 「絵画の創作に熱中しすぎたから、外に出たら虹が見えました。また先輩とお会いできましたね」  結衣ちゃんは笑い、ノラの猫を離してあげてる。 「先輩、このあと用事あります? 少し行きたいところがあって、良かったら一緒しませんか?」 「用事ないから、ついてくよ。どこでも」  廉は答えた。冷静を装っていたが、内心、踊り出したい気分だった。  廉は一旦、家から自転車を持ってきた。結衣ちゃんも赤色の自転車を持ってきてる。  ふたりで駅まで自転車をこいだ。駅の駐輪場に自転車を置く。この駅は寂れた駅で、コンビニくらいしかない。でも、一駅だけ電車で移動すれば、途端に都会だ。華やかなイルミネーションが輝く、千葉でも有数の都市。  廉と結衣ちゃんは、そこの「丸岡ビル」の六階の展示場に向かった。結衣ちゃんいわく、「そこで友達のデザイナーさんがバレリーナの衣装を展示している」らしい。  丸岡ビルはお洒落な雑貨屋さんや服屋さんが多い。けれど、エスカレーターで上がっていくと、落ち着いた雰囲気になる。六階までいくと、すれ違うのは五十代くらいのご夫婦とかで、グッと年齢層が高くなる。 「ほら、先輩、ここですよー」  結衣ちゃんが弾んだ足取りで前を歩いている。彼女は白地にりんご柄の可愛いワンピースに、一旦家に帰った時に着替えたのだろう。今の季節にそれがピタリとはまる。廉は家を出る時に適当に着てきたピンクのポロシャツなので、若干恥ずかしかった。 「結衣ちゃんー。来てくれたんだね嬉しいー。そちらのイケメンさんは?」  二十代くらいのお姉さんが、結衣ちゃんと握手している。 「うちの学校の生徒会長さんです。今日はメガネをかけてないから、イケメンさんですよね」  メガネをかけてないから?   そう言えば、家をふらりと出る時に、普段の伊達メガネなんてもちろん置きっぱなしにしていた。濃緑色のメガネ。  女の子たちの話を邪魔するのも悪いので、展示されているバレリーナさんの衣装を観察する。  一目でアラビア風とわかる白い衣装は、宝石を思わせるキラキラした大きなビーズがス裾に刺繍されていた。これを着て踊るのだろうか。
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