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第2章 ゴールデンウィーク②
「先輩。話し込んじゃいましてすみません」
結衣ちゃんが隣にやってきた。そして、衣装の前から動かない廉に気づいたみたいだ。
「どうしました?」
「すごく綺麗だよ、これ」
なんと言えばいいのだろう。これまで生きてきて、こんな感動、なかった。中学校の修学旅行で奈良に行った時に、春日大社の鳥居に感動したことならある。でも、それ以上の感動がここにある。
結衣ちゃんは廉の傍にずっといてくれた。
恥ずかしいような気持ちもしたが、廉は「動きたくなかった」。
展示場には、その他にも「くるみ割り人形」のクララという少女が踊る小さめの衣装もあった。その前でも廉はずっとたたずんでいた。
「先輩、お腹すきませんか?」
結衣ちゃんが優しく声をかけてくれる。
「この階に和風カフェがあるので、良かったら」
「行く!」
そう答えた自分は、きっと鼻息荒くしてるのだろうな、と、廉は自分でも恥ずかしかった。
和風カフェに行くと、石畳を思わせる床に、木のテーブルと椅子が置かれている。椅子の上には手作りのような和の布のクッションがある。
結衣ちゃんが「わらび餅の乗ったパフェと抹茶ドリンクをお願いします」とメニューも見ずに言うので、廉も同じものを注文してしまった。
運ばれてきたパフェとドリンクに、廉は息を呑む。
わらび餅が本当に、パフェに乗ってる!
結衣ちゃんが慣れた様子で、スマホで写真を撮ってる。
「あ、スマホ、家だ」
廉はカバンの中を探って、落胆する。
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