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第2章 ゴールデンウィーク③
「えー。先輩とライン交換とか、したかったです」
恥ずかしそうに笑って、結衣ちゃんはそう言った。
わらび餅とバニラアイス、上にかかっている黒蜜とのハーモニー。
「女子って、これがフツーなのか?」
思わず、結衣ちゃんに聞いてしまう。
結衣ちゃんは一瞬、意味がわからなかったようだったけれど、そのあと、ふわりと微笑んだ。
「女子ならフツーのことです。でも、男性でももちろん食べますよ。ほら、向こうの席におじさんだって」
結衣ちゃんが指差した先には、確かに中年のおじさんがいて、美味しそうにパフェを大口開けて食べている。
「そっか。これ、フツーなんだ」
女子に生まれたかったとは、これまで、あまり考えたことはなかった。
けれど、今日はちょっと思う。女子、羨ましい。すげー。
「結衣ちゃん。あのさ」
デートに誘うみたいで気がひけるのだが。
「明日も、俺、今日くらいの時間に公園来るよ。ブランコに座ってると思う。良かったらさ。来て欲しいんだ」
真っ直ぐに結衣ちゃんに伝えた。
結衣ちゃんはちょっと驚いたように廉を見ていたけれど、何かがおかしかったようで、ぷふふ、と吹き出す。
「はい。それなら明日はスマホ、持ってきてくださいね。ライン交換しましょ。それに、我が家のアトリエにご案内しますから。美術大学の講師をしていた、おばあちゃんの部屋なんですけれどね」
嬉しいことを言ってくれるじゃないか。この子。
廉は足取り軽く帰宅した。
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