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 小学生のときは、毎週のようにお互いの家に行ってゲームをしたり漫画を読んだりした。異性のことを意識し始める年齢だったけれど、わたしたちにそんな感覚はまったくなくて。  夏休み中は何度もお泊まり会をして、深夜に親に隠れてするゲームがたまらなく楽しかった。  そう。お泊まり会にはもう一人いたんだ。わたしと奏馬と同い年で、奏馬のいとこのハジメくん。ハジメくんは奏馬と性格が似ていて、二人していつもわたしのことをバカにしてた。  揶揄われてよく文句を言ってたっけ。それでも二人のことを嫌いにはなれなくて。  帰る日なんて、泣きじゃくって親を困らせてた思い出がある。懐かしい。  ハジメくんは別の学校に通う男の子で、今はどうしているのかはわからない。噂によると、中学でいじめに遭って不登校になったと聞いた。だから奏馬にも深くは聞けなかった。 『なんだよ』  部屋に帰ってから、何気なく彼のことを見ていたら、そんな声が返ってきた。 「別に。それより、着替えるから外に行ってよ」 『お前さ、窓閉めるなよ』 「わかってるって。窓は開けとくよ。ご飯食べるから、下には行くけど。電気消しといてもいい?」 『いいよ』  わたしはいつも通り、窓を開けて彼を外へ出した。  着替えを終えて下に降りる。そこから一時間くらいはリビングにいた。奏馬が一階に降りてくることも、部屋に入ってくることもない。  二階へ上がれば彼は同じように待っていてくれる。そう思っていたのに。  午後七時半を回ったところで、二階へ上がったとき、部屋の中には誰もいなかった。最初はただのイタズラだと思った。電気を点けても奏馬は出てこなくて、窓の外を見渡してみても現れない。 「ねぇ、なんなの? そういうのもういいって」  わたしは外へ向かって言葉を投げかけた。それでも返答はない。  十分ほど待ったあと、もう一度外を見てみる。しかしやはり、奏馬は出てこない。  わたしはムカつきを通り越して、心配になってきた。もしかしたら、彼はわたしの知らないところで、もう勝手に成仏をしているのではないか。わたしになにも言わずに。  そう考えると急に悲しくなった。さっきまでずっと一緒にいた奏馬が、唐突に姿を消して、今度こそ二度と会えなくなる、そんな寂しいことが起こるなんて。  嫌だ嫌だ。消えるにしても、なんでわたしになにも言わずにいなくなるのよ。そんなのあまりにも勝手だよ。  瞼の奥から涙が迫ってきて、懸命に泣かないように堪えた。  気がついたときには、わたしは外へ出ようと靴を履いていた。 「どこ行くのこんな時間に?」  お母さんからはそんな声が聞こえる。
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