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 三津谷くんは黒縁メガネの奥から、鋭い視線を送っていた。試されている、そんな風に感じてしまう。 「もちろん怖いよ。でも、本当は慣れてるっていうか」 「君も霊感があるの?」 「う、うん。少しだけね。でもはっきりとは見えない。ぼんやりって感じで。顔とかもぼやけて見える」  その相手と口論になって、さっきまでそいつに腹が立ち過ぎて泣きそうになっていた、とは言えない。 「そっか。じゃあ気づいてたんだ。君に憑いている霊が」 「なんとなくは」 「それなら早くお祓いしないと。放置してたらどんどん悪い方へ向かっていくかもよ。僕のおばあちゃんがさ、そういうの祓ってくれるんだ。もし時間があるなら一緒に行くけど、どうかな?」  思わぬ展開にわたしはわかりやすいぐらいに動揺した。お祓い? ってことは、奏馬は消えちゃうってこと? それはヤバい。どうしよう、そう思っていたら、タイミング良くチャイムが鳴った。 「あ、やべ。じゃあ考えておいてよ」  三津谷くんは手を振って自分のクラスへと帰って行く。わたしも教室へ戻らなきゃいけなかったのに、すぐにはその場から動くことができなかった。  奏馬が消えちゃう。このままだと、奏馬が消えちゃうよ……。
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