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 その後、優しい金岸くんはわたしを自宅まで送ってくれた。 「じゃあな」と言って手を振って帰っていく彼。自転車をガレージに置いて玄関へ向かうとき、奏馬はフッと近寄ってきてわたしに言った。 『……あいつはいい奴だ。おばあちゃんっ子っていうのも本当。母子家庭みたいで、妹の世話も率先してやってるみたいだな。あいつならいい彼氏になると思う』 「だからなにそれ。わたしにはそんな気ないから」  玄関のドアを開けて靴を脱ぐ。おかえりー、という声が聞こえて、返事をしながら二階へと上がった。 『黒川がダメなら、金岸ってやつでもいいと思う』  階段を上がりながら奏馬は話を続けている。 『俺としては黒川を推したいけど、お前がいいと思う方を選べばいいんじゃね』  自室のドアを開けて、灯りをつける。部屋の中は蒸し暑くて、わたしはエアコンのスイッチを入れた。 『まあ、三津谷だけはダメだ。あいつはヤベェ奴だから』  わたしは返事をしない。彼の話を黙って聞き続けた。鞄を机に置き、ベッドに腰を下ろす。 『お前に相応しい奴を早く見つけないとな』 「ねぇ」 『ん?』 「着替えるから」 『ああ、出てくよ』 「あっち向いてて」 『え、ああ、うん』  わたしはタンスから部屋着を取り出して、制服を脱いだ。近くには幽霊だとはいえ、幼なじみがいる。下着姿になって、少しだけドキドキした。制服をハンガーに掛けてジャージに着替える。中学のころから着ているヨレヨレのジャージ。そう思ったけど、やっぱりちょっとだけおしゃれな服に変えた。奏馬に見られると思うと恥ずかしくて。 「もういいよ」 『うん』  心臓が高鳴っていくのが自分でもわかる。これからなにを言おうとしているのか、それに体が反応しているのだ。 「奏馬はさ、どんな人でもスキャンできるの?」 『まあ、たぶんできるんじゃね? なんで?』 「今日の奏馬はさ、どうしてかわからないけど、わたしに男子を薦めてくるよね。なんでなの?」
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