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わたしは朝からずっと思っていた疑問を彼にぶつけた。
『いや、なんでって、別に理由はないけど、その、お前にさ、やっぱり、いい人が見つかってほしいなって、思ったから』
しどろもどろになりながらも、彼は声を返す。
「……わたしの、わたしの気持ちは、どうなるの?」
『え』
「わたしが誰を好きなのか、それは関係ないわけ?」
『いや、それは……』
「ねぇ」
『ん?』
「……わたしを、スキャンしてよ。誰でもできるんでしょ? だったら、わたしのことも、スキャンしてよ」
言ったあと、奥歯が震えているのを感じた。指先が冷たくなって、これが冷房の冷えではないことぐらいわたしにも理解できた。
『な、なんだよ、それ』
「できないの?」
わたしは立ち上がり、ドアの前まで行って振り返る。
「ご飯食べてくるから。帰ってきたら……スキャンしてよね」
『……わかった』
「冷房は付けとく。電気は消すよ」
灯りを消して部屋を出た。わかった、という奏馬の言葉が頭の中で木霊する。心臓は高鳴り続けていた。
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