8人が本棚に入れています
本棚に追加
万加部くんがトイレから戻り、席に着く。
「……あのさ」
「ん?」
「万加部くんてさ……」
「は、なに? どうしたの?」
「えっと」とさすがに恋人のことを簡単には聞けない。どうしようと思っていたところで、再び声が聞こえた。
『好きな食べ物はオムライス。デミグラスソースのやつ』
「す、好きな食べ物って、なに?」
「好きな食べ物? なんだよ唐突に」
「いや、ちょっと気になったから」
「好きな食べ物かー。そうだなぁ、やっぱり俺はオムライスだな。デミグラスソースのやつ」
『特に、中央亭のオムライスは格別』
「特に、中央亭のオムライスは格別でさ。マジ絶品なんだよ。食べたことある?」
「あー、いや、ない。へぇ、そうなんだ。今度食べてみるね」
「是非是非」
万加部くんから視線を逸らし、右上の方を見ると、腕組みをした奏馬がドヤ顔でわたしのことを見下ろしていた。
最初のコメントを投稿しよう!