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 万加部くんがトイレから戻り、席に着く。 「……あのさ」 「ん?」 「万加部くんてさ……」 「は、なに? どうしたの?」 「えっと」とさすがに恋人のことを簡単には聞けない。どうしようと思っていたところで、再び声が聞こえた。 『好きな食べ物はオムライス。デミグラスソースのやつ』 「す、好きな食べ物って、なに?」 「好きな食べ物? なんだよ唐突に」 「いや、ちょっと気になったから」 「好きな食べ物かー。そうだなぁ、やっぱり俺はオムライスだな。デミグラスソースのやつ」 『特に、中央亭のオムライスは格別』 「特に、中央亭のオムライスは格別でさ。マジ絶品なんだよ。食べたことある?」 「あー、いや、ない。へぇ、そうなんだ。今度食べてみるね」 「是非是非」  万加部くんから視線を逸らし、右上の方を見ると、腕組みをした奏馬がドヤ顔でわたしのことを見下ろしていた。
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