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Grow on someone * だんだん気になって
塾のない日の放課後、いつものように廊下の自習用の椅子に座って、本を読みながら隣のクラスが終わるのを待っていると、西寺が隣に座った。
「学校出たら暑いと思うと帰りたくない」
「電車に乗ったら、ここよりエアコン効いてて涼しいよ」
「帰る時起こして。それまで寝る」
そう言うと西寺は、私の横で自分の腕を枕のようにしてテーブルにうつぶせになった。
たまたま、偶然、西寺の肘が、本を持つ私の腕にふれていて……そこだけ熱い。
よけようと思ったらいくらでもよけることができたのに、そうしないでいた。
「篠田の、にんじん肉で巻いたやつ食べたい」
「お母さんに頼んだら? 絶対私なんかより上手で美味しいの作ってくれると思うよ?」
「あの、焦げてるのがいいんだよ」
「それ、さりげにディスってる?」
「卵焼きでもいい。たまに殻が入ってるやつ」
「嘘! 殻入ってた?」
「たまーに」
「ごめん」
「一緒に昼食べない?」
「それは……遠慮します」
「何で?」
「西寺のフアンの子に睨まれるから」
「くだらない」
「自分がモテるの自覚した方がいいよ?」
「知ってるし。オレ、今までもこれからもモテモテの人生だから」
「感じ悪~い」
「つまんねぇ」
そう言うと、「寝る」って言っていたのに、西寺は立ち上がった。
「バイバイ」
西寺は私の頭をくしゃっと撫でると、帰って行った。
「結局寝てないじゃん……」
西寺の姿が見えなくなってから、そっと、自分の頭にふれた。
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