第4話

1/3
前へ
/16ページ
次へ

第4話

「……慧くんが、大怪我?」  次のデートを決めようとしていた時に、知らない番号から連絡がきた。  相手は彼のお母さんで、彼女がいるから代わりに連絡してくれないかと頼んだらしい。本人は入院していて今は携帯の許可を出されていないのでお母さんに伝えたのだとか。 『そうなの。大怪我と言っても、落ちてきた鉄骨の下にいた子どもを庇って頭を怪我しただけだけどね。ちょっと縫って体力も使ったから、お医者さんに携帯は数日使っちゃダメって言われたのよ。夏芽さんだっけ? 病院教えるから、慧のお見舞いに来てもらえるかしら?』 「行きます」  断る理由などどこにもない。慧くんが怪我をしたことにも当然驚いたが、無事への安心感が大きかった。誰かを助ける正義感は、ああいう人だからあるのはわかっていたけど……生きていて良かったって気持ちの方が大きい。  本当ならすぐにでも駆けつけたかったが、その日はもう面会時間には遅かったし、慧くんも休みたいだろうからと自分に言い聞かせて我慢した。  だから、次の日は大学を休んだ。病院は、彼のお母さんがLINEで地図と部屋番号を教えてくれたので、支度をしたらすぐに向かった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加