第4話

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 病院なので念のためマスクはしたけど、感染症の波はまだ完全に落ち着いていない時勢なので油断は出来ない。慧くんにもそれはあってほしくなかった。 「こちらへどうぞ」  看護師さんに手続きが終わってから病棟に案内してもらうと、部屋ではベッドに持たれていた慧くんが元気そうに手を振ってくれた。 「慧くん、大丈夫⁉」 「大丈夫。ちょっと痛いけど、麻酔切れ始めただけだから」 「よかった……」  個室だから、って理由もあったけど。看護師さんも下がっていたから、遠慮なく彼に抱きついた。慧くんはびっくりしてたが、すぐに『ありがとう』と言いながら抱き返してくれたわ。 「ごめん。心配させて。けど、あの時は咄嗟に体が動いてた」 「……ううん。相手の子も無事でよかったね」 「ああ。それは本当によかった」  ただ、怪我はなかったけど、慧くんが頭からたくさんの血が流れているのに驚いてずっと泣いてしまったらしい。救急車は、近くを通ったおばさんが呼んでくれたんだって。それに、少し縫ったものの怪我の具合は比較的軽かったそうだ。痛いが我慢できないほどではないと慧くんは苦笑いしながら説明してくれた。
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