第5話

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第5話

 相手を大事に思うがために、イレギュラーなことが今回は起きたけど。  でも、それでも大事にしてくれる人と出会えるだなんて、とても奇跡でしかない。  こんなにも相手を大事にしてくれる人と出会えてよかった。そう実感していると、電話では話した彼のお母さんがやってきて、改めて自己紹介した。  態度が気に入られたのか、お母さんはずっと慧くんによく似た笑顔で会話をしてくれた。 「こんなにも可愛らしい彼女が出来ただなんて。電話でも思ったけど、しっかりした人じゃない。慧? 絶対逃がしちゃダメよ?」 「それ、さっき宣言した」 「あら、やるじゃない」 「あ、あの……わがまま言ってすみません」 「いいのよ。あ、うちにも是非遊びに来て? お父さんにも紹介したいわ」 「は、はい」  まだ付き合い立てなのに、家族公認みたいになってしまった。だけど、慧くんのお父さんは登山事故で数年前に亡くなってしまっていて、実際に紹介されたのは……彼が退院してから実家にお邪魔した時の、仏壇の写真だったけれど。 「山に入ったら雨に降られて……地盤が崩れて、そのまま落下したんだ」 「……それでも、雨が好きなの?」
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