第5話

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 ささやかだが、雨の日の穏やかな過ごし方だと嬉しくなり……そこから、うちの家族ともお付き合いをすることになって、大学卒業を機に本当の家族になった。 また雨の日に慧くんからプロポーズをされたのだ。雨のカーテンが開けたあの瞬間、婚約指輪を準備していたのにもたつく彼の慌てようが可愛かったのを覚えている。  結婚式は六月のジューンブライトよりも雨の日のために狙ったが、本当にそうなるとは思わず。  参列者は憂鬱だと思ったようだけど、主催の私たちはとても嬉しくて……披露宴終わりに雨が上がってから、衣装を汚さないように気をつけて雨上がりの匂いを堪能しに行ったのだった。  むせかえる、空と緑の幸せな匂いを嗅ぎに。  そして、雨の軌跡から生み出される空のカーテン……『虹』が見えた時は夫となった慧くんと大声で笑い合った。
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