第1話

2/3
前へ
/16ページ
次へ
「雨の降り方とか? 真っ直ぐもあるけど、横殴りとか面白い。冬は雪の結晶とか、降り方の違いかな」 「へぇ~」  匂いではないけれど、自然についての良し悪しを共感してくれる相手が見つかるだなんて思わなかった。きっかけはゼミの時間だったが、終了後にLINEのIDを交換して、学食でランチを一緒に食べるという展開までいった。講義関係なく、話は同じ内容でも飽きることなくテンポよく進んでいくのが楽しく感じたくらい。今までの友人関係が希薄だったわけではないが、初対面でここまで通じるのは正直言って楽しいし嬉しかった。 「今度雨の日にさ? いっしょに出かけない? 夏芽の言う雨上がりの匂い、改めて知りたい」 「いいの? めちゃくちゃ暇だよ?」 「それに合わせて、時間つぶしはいくらでも出来るだろ? 映画とかショッピングとか」 「なにそれ。デートみたい」 「ま、言い換えればそうだけど。付き合うかどうかは、まだお互いわかんないじゃん。とりあえず、趣味の共有からの友だちでよくない?」 「ん。いいね」  そんな切り出し方をしてくれる相手が今までいなかった私にとって、その提案は魅力的だった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加