博多リバレイン

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博多リバレイン

eca7ed0f-7f9e-49f3-b0bc-1fec280bfae8 《見送り》 呑取日本号(のみとりにっぽんごう) ある年の年頭のこと、主君 黒田長政の名代として母里太兵衛が福島正則のもとを訪問し、新年を祝賀する口上を述べました。 福島邸では新年を祝う酒宴の真っ最中。福島正則はすでに酩酊状態でした。盛んに酒をすすめられますが、母里太兵衛は「失礼があっては」と固辞。 すると不意に福島正則が、黒田長政の悪口を言いはじめたのです。 人一倍忠義に厚い母里太兵衛は、黙っていられません。 福島正則に酒呑み勝負を挑みました。 すると、福島正則は巨大な盃に大量の酒を注ぎはじめ、「これを飲み干せば好きな物を取らせる」と宣言。 母里太兵衛はそれを聞き、「飲み干したら日本号を所望したい」と申し出たのです。 そして、母里太兵衛は大杯になみなみと注がれた酒を一気に飲み干し、涼しい顔で日本号の槍を手にして、意気揚々と引き上げていったのです。 翌日、素面に返った福島正則は狼狽しました。 なぜなら日本号は、豊臣秀吉から下賜された家宝とも言える槍だったのです。 何度も使者を送り「返して頂きたい」と申し入れてきましたが、母里太兵衛は一蹴。 最後まで日本号を返すことはありませんでした。 この逸話から、日本号は別名「呑取」と呼ばれるようになったのです。
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